退職時に人々が答を出さなければならない最も難しい問いの一つは、恐らく最も単純な問いでもある。それは「私は何者か」ということだ。長いキャリアを通じて、私たちは家庭生活から切り離されたアイデンティティーを形成する傾向がある。それは仕事に関連した自尊心のようなものでもある。しかし、退職とともに、私たちはそのアイデンティティーの放棄を強いられる。以前の役割がなくなった新生活の中で、自分が一体誰なのかを見つけ出す作業が、就労から引退へ移行する過程の大部分を占めることになる。退職した人が、この移行期間をいかに乗り切るかが、その後の生活から個人的充足感を得る上で、極めて重要な要素となり得る。この問題に関する調査の過程で、筆者は同僚らとともに、退職後の自己意識を維持するために人々が用い、そして成功を収めた多くの戦略を見いだした。それらを「アイデンティティーの橋渡し(identity bridging)」と呼ぶことにした。物理的に分断された場所を人が行き来できるようにするのが橋であるのと同様に、アイデンティティーの橋渡しは、退職という人生の大きな節目を経験する際に、男女を問わず、個々のアイデンティティーの多様な側面を維持する助けとなる。
退職後も「自分は誰か」を保つ7つのヒント
新しい自分を作るコツは古い自分の最も重要な部分を残すこと
有料会員限定
あなたにおすすめ