2019年10月の消費増税に当たり、クレジットカード業界に激震が走った。中小店舗でキャッシュレス決済を利用した際に、増税分を遥かに超えるポイントを還元するという政策を政府が打ち出したからだ。増税による消費の落ち込み回避とキャッシュレス推進のためだが、あまりの大盤振る舞いに業界からは困惑の声が出ている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)
2019年10月の消費増税まであと10ヵ月少々しかない中、キャッシュレス決済をめぐるポイント還元策が迷走している。
「東京五輪までの9ヵ月間、例えば還元率5%で検討したい」
11月22日、安倍晋三首相が突如、当初予定していたポイント還元率2%を5%に引き上げる考えを示した。
だが、ほんの1週間ほど前の同14日、経済産業省幹部が大手クレジットカード会社9社の首脳陣を一堂に集め、「還元率は2%、期間は最大1年でお願いしたい」と正式に要請したばかりだった。
そもそもこの還元策は、「カード業界にとってコスト負担が大きすぎる」(大手カード会社幹部)ことから、カード業界からは総スカンを食らっている代物だ。
当初の仕組みは、中小の店舗でクレジットカードやデビットカード、QRコードなどを使ってキャッシュレス決済を利用すると、消費増税分に相当する2%をポイントで還元するというもの。還元する期間は増税後の最大1年間に限られるため、いわば時限的なキャンペーンというわけだ。
消費者からすれば、このキャンペーンに参加する店舗で買い物すれば2%のポイント還元を受けられる。だが、参加しない店舗で買い物すると、ポイントは還元されないことになる。