大改良を躊躇しない
ソフト会社のカルチャー

 自社開発したのが2号機のW。「改善策は全て分かっていた」(川竹)故に、改良というより全く違う製品をゼロから設計した。

 画面は初号機の3倍以上の2.4型に拡大してタッチパネル操作を導入。物理ボタンは翻訳対象となる言語を割り当てる二つのみで、直感的な操作ができる。

 日本語と英語を選択した場合、日本語側のボタンを押しながら話し掛けた後にボタンから指を離すと英語に翻訳された音声が再生される。もう片方のボタンを押して英語で話し掛けると、日本語に翻訳された音声が再生される。

 SIMは最初から埋め込んで初期設定を不要とし、箱を開けて電源を入れただけで使える。

 さらにこだわったのが会話を妨げない応答速度。マイク精度を高めるというハードの作り込みとソフトウエアの改良を同時に進め、翻訳速度を初号機の最大7.4倍まで向上させたのである。

「初号機を買ったユーザーもいるのに、短期間でここまでデザインや性能を変更することに抵抗はなかったか」と川竹に水を向けると、「いいえ」と即答。「その時点で最高の製品ができるなら、躊躇せずに作るべき。製品を素早く世に出してどんどん改良するのはソフトの作り方と似ているかもしれない」。1年たたずに大改良された2号機発売に伴って、初号機の下取りサービスを導入している。

 ハード参入に当たっては、ソラコムの紹介で出会った中国拠点の受託サービス会社(EMS)、ジェネシスホールディングスの存在が大きかった。深センで17年の経営経験を持つジェネシス社長の藤岡淳一のサポートを受け、短期間で「ファブレス」のハードメーカーに脱皮したのだ。

 翻訳機の進化は始まったばかり。スマホがピークアウトする一方で、音声翻訳機のようなIoT機器はまだまだ広がる。「これからのハード製品は、ソフトのノウハウが差別化」と信じる川竹は、次の翻訳機の構想を膨らませている。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

【開発メモ】ポケトークW
 パソコン用ソフトが祖業のソースネクストが開発したクラウド型の音声翻訳機。携帯回線やWi-Fiを通じて翻訳処理をする。9月発売の「ポケトークW」は、2017年12月に発売した初号機「ポケトーク」を改良した2号機。グーグル翻訳に加え、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の翻訳エンジンも採用するなど、翻訳精度を高めて使い勝手を劇的に向上させた。2年間通信できるSIMカード内蔵モデルは2万9880円(税別)。
ボケトークWPhoto by Reiji Murai