捜査急展開に2人のキーマン

 今回の逮捕劇は、ゴーン容疑者サイドから見れば「クーデター」、日産サイドから見れば「堪忍袋の緒が切れた」と言えるだろう。

 両者の見方は別として、明らかになっている点が事実なら、どう見ても会社の私物化、横暴が過ぎる。ゴーン容疑者に矢が向くのは時間の問題だったのは間違いない。

 しかし日産としても、経営トップが現職時に行った犯罪行為であれば、放置すれば法人として罪に問われるのは必至で、ゴーン容疑者の追放とともに傷を少しでも小さく抑えたいという意向が働いたはずだ。

 そこで「司法取引」だったのだろう。

 日本の司法取引は今年6月、改正刑事訴訟法施行で導入された。容疑者や被告が共犯者など他人の捜査や公判維持に協力する見返りに、自らの起訴を見送ってもらったり、求刑を軽くしてもらったりする制度だ。

 対象となるのは贈収賄や談合、脱税、独占禁止法違反などの経済事件のほか、銃器や薬物事件に限定される。個人だけではなく、法人(今回の場合は日産)が処罰対象になり得るケースでは、企業も取引が可能だ。

 日本では今年7月までに、タイの発電所建設事業を巡る贈賄事件で、元執行役員が現地の公務員に賄賂を渡したとされる三菱日立パワーシステムズ(MHPS、横浜市)と初めて司法取引が成立。MHPSは捜査に全面協力し、元執行役員は起訴されたが、法人としてのMHPSは不起訴となった。

 今回の事件はどうか。ゴーン容疑者がケリー容疑者にメールで有報への虚偽記載などを指示。それを受けて法務担当の外国人執行役員と、別の幹部社員の2人が実行していたとされる。

 役員報酬は監査法人による監査の対象外だが、日産の監査法人はゴーン容疑者にSARの報酬を有報に記載するよう進言していた。実は日産は春ごろには既に内部調査に着手し、こうした経緯から2人の実行行為を特定。2人には社内処分の軽減などとともに司法取引に応じるよう提案したとみられる。