反対派のモヤモヤに配慮を

 財布からお金数えて出して、お釣りをあらためまた財布に入れる。あの一連の面倒くさいやりとりがなくなるだけでも、筆者はキャッシュレス化のメリットがあるように、深く考えず思ってしまう。しかし、長年、物理的なお金でやりとりしてきた歴史があるため、キャッシュレス化に戸惑う人が出てくることは、当然のように想像できる。

 個人的には、音楽のダウンロードには慣れたが、ゲームと書籍、雑誌だけは、いまだに物理的なパッケージで持っておかないと落ち着かない。なぜかと問われれば、いろいろ説明はできるものの、結局は“物理的な感覚”を我々は思ったより重視しているということだ。いくら便利になっても、そこに生理的に乗れない人がいる。キャッシュレス化も、その1つなのだろう。

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 ちなみに、キャッシュレス化に賛成の筆者でも、1つ不満がある。筆者は会社員時代に作ったクレジットカードをそのまま使っているが、現在はフリーランスであるため、新規にカードを作ることが社会的な信用の問題でなかなか難しい。そういった点で、キャッシュレス化が進めば、ある種の格差が広がるのではないか、という懸念もある。

 消費増税におけるポイント還元のように、これからキャッシュレス化を推進するにあたって“お得さ”を売りにする施策を打ち出す流れは、政府に限らず民間でも広がっていくだろう。しかし、メリットを声高に叫ぶだけではなく、市井の人のモヤモヤに耳を傾けることも大切である。なるべく軋轢や不平等を生じさせないように配慮してほしいものだ。

 今後どのように日本社会のキャッシュレス化が進んでいくのか。便利さ、お得さを追求するだけではなく、日本人の日常感覚に合わせた進化と推進が求められると筆者は考える。

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(フリーライター 宮崎智之)