平均より年収は高いはずなのに貯まらない…という人たちに共通する問題とは何か? 書籍『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』の刊行を記念して、著者・柴山和久さん(ウェルスナビCEO)と風呂内亜矢さん(ファイナンシャルプランナー)の特別対談をお送りします。前編では、お金が貯まるようになる習慣について聞いていきます。(撮影:梅澤香織)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP®認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
大手電機メーカー系SIerに勤めていた26歳のとき、貯蓄80万円でマンションを衝動買いしたものの、物件価格以外にも費用がかかることを知り、あわててお金の勉強と貯金を始める。現在は夫婦で4つの物件を保有し、賃料収入を得ている。一方、当初のマンション購入をきっかけにマンションの販売会社に転職。「完済年齢を把握する」「不動産と重複する保険はかけない」など、自身がマンションを購入したときの体験を交えた営業が顧客の共感を集め、年間売上1位の実績を上げる。2013年、ファイナンシャルプランナーとして独立。現在はテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。公式サイト:http://www.furouchi.com/、公式ツイッター:@furouchiaya
風呂内亜矢さん(以下、風呂内) ご著書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』を拝読して、1章に書かれていた、柴山さんの5つの失敗談は非常に共感しました。その後は後半に向けて、柴山さんがウェルスナビを立ち上げようと決断された背景が語られていき、さらに熱がこもっていくというか。
冒頭はアメリカ人の奥さまのご両親と、ご自身のご両親の資産格差の話が出てきて、そうはいっても日米の違いではないのかと思って、読み進むうちに一つひとつ謎が解けていくような感覚でした。
柴山和久さん(以下、柴山) ありがとうございます。日ごろ、ファイナンシャルプランナーの風呂内さんに相談にくる方の悩みは、どんなことが多いですか。
風呂内 ご相談全体で圧倒的に多いのは、資産運用より以前にまず家計を改善したい、改善すべきというケースです。そして、ご相談を受ける方のうち、投資のステップに進んでいらっしゃるのは、わずか1割ぐらいという感覚です。でも、その1割の方たちは、私が舌を巻くぐらいお詳しいうえにアグレッシブで、「預金に40万円でも置いておくのがもったいない」と言われる。生活費の3ヵ月~半年分は預貯金で確保しておきたいと考えている私にとっては驚きです。資産運用に対しては消極派と積極派が、かなり二極化している印象ですね。しかも、その1割の方が声を大にしてそのアグレッシブな姿勢を強調されるので、余計に初心者の方は怖くなって投資や資産運用に乗り出せない雰囲気です。
柴山 日本だとネット上でも書店でも、その1割の声の大きい人の「短期間でこんなに儲かりました」という言説が広がってしまっていて、あれを投資の初心者の方がご覧になると「自分にはできない」と引いてしまうと思います。再現性があまりなさそうな手法も多いですし。では、家計改善については、どのような悩みが多いですか。
風呂内 非常にシンプルで「入ってきたお金が、全部出て行ってしまう」という悩みが一番多いです。しかも、何に使っているかわからない。光熱費がいくらか聞かれても、案外わからない方は多いと思うんです。食費や交際費、固定費も含めて自分の生活にどのぐらいコストがかかっているのか、それを振り返るだけでも節約への効果は大きいですよね。あっランチにこんなにお金を使っていたんだ、とか気づきがありますから。
柴山 自分の生活にかかるコストを知るために、おススメの方法はありますか。
風呂内 最近は家計簿をつけるアプリもありますから、そういうものを活用されるのもいいですよね。それが面倒であれば、通帳を見るのが手っとりばやいでしょう。直近6ヵ月の通帳をみて月初と月末を比べるだけでも、今月が黒字だったのか赤字だったのか増減で分かりますよね。毎月使い切ってしまっている状態や、ボーナスを切り崩していることなどが、ひと目で分かります。
アマゾン「ほしい物リスト」を活用した節約術とは?
柴山 収支を改善するには、何から削っていけばいいのでしょうか。
風呂内 いわゆる固定費と呼ばれる住居費や保険料、通信費あたりがテコ入れしやすいところですね。
ウェルスナビ代表取締役CEO
次世代の金融インフラを日本に築きたいという思いから、2015年に起業し現職。2016年、世界水準の資産運用を自動化した「ウェルスナビ」をリリースした。2000年より9年間、日英の財務省で、予算、税制、金融、国際交渉に従事。2010年より5年間、マッキンゼーにおいて主に日米の金融プロジェクトに従事し、ウォール街に本拠を置く資産規模10兆円の機関投資家を1年半サポートした。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。ニューヨーク州弁護士。
柴山 固定費…たしかに。それは私も起業するときに、家賃が安くて狭い物件に引っ越して削減しました。そこを下げても、やりくりは結構大変だな、と今でも日々感じています。
風呂内 ひとつだけ改善しても劇的に変わらないこともありますよね。問題点が点在している方も多いですから。まずは固定費から削ってみて、次は変動費を検討してみる。私自身が過去に貯められない状態から貯められるようになったとき一番効いたのは「3回見ても欲しい物しか絶対に買わない」というルールでした。やってみると、アマゾンの「ほしい物リスト」に入れておいても、実際に買ったものは20個のうち1個ぐらいなんですよ。
柴山 アマゾンの「ほしい物リスト」って、そうやって家計節約ツールとして使えるんですね。知らなかった……早速、今日からやってみます。
風呂内 あとは、いろいろな家計節約術が世の中にはあふれていますから、手当たり次第に全部やってみて、嫌だったらやめていく、というのはおススメです。家計簿をつけなきゃとか食費を切り詰めなきゃとか、あれもこれもやっていると、辛くなってきます。投資と同じで節約も続けることが大事なので、自分が1回はやってみて辛いことはやめたほうが、長い目で見たとき節約は続けられると思うんですよね。