福岡の人は
ほめられることが大好き
たとえばポップコーンの話題を取り上げるとします。このときにいきなり「天神でポップコーンが流行っています」と伝えるよりも、より数字を上げる伝え方があります。
それは「今ニューヨークで最先端のこんなポップコーンが流行っています。そして、天神でも……」というように、他の都市の例を前に入れることです。
ほかにも福岡の視聴者の特徴を多く見つけました。福岡の人は福岡をほめられることが大好きなので、福岡への批判記事は反応が悪い。スポーツの話題では、野球よりもサッカーのほうが残念ながら視聴率の反応が悪い。くやしいですが、サッカーはW杯のような試合ですら全国と比較すると、福岡地区では相対的に数字が落ちるのです。ですから、サッカーの場合はさらにひと工夫して放送する必要があります。
このような知見から仮説を立て、実際の放送で試してみて、翌日のグラフで検証します。すると「やはりここで上がっている」「なぜかここで下がっている」などということがわかります。
毎日毎日、真剣にこのトライアンドエラーを繰り返すことで、2年目からは連日、視聴率が10%台になり、4位だった視聴率は1年間で1位を取れるようになりました。
視聴率という数字を「ものさし」にして、プロデューサーやスタッフと番組の修正を繰り返していくことで、私たちのチームはきっちりと結果を出すことができるようになったのです。
福岡独自の関心事やリアクションの予測ができる。これは、市長になった今でも政策立案や市民のみなさんとのコミュニケーションにおいて、とても大きな財産となっています。
また、「アサデス。」で経験を積んだことで「地方の番組に求められるものは決して東京と同じではない」ことを知ることができました。そして「その違いを分析して勝負すれば、予算などで圧倒的に劣っていても、東京や海外などの巨大都市をも凌駕(りょうが)することができるかもしれない」と思えるようになりました。
福岡市が、人口や経済の規模が圧倒的に大きな都市と対峙(たい じ)しても、置かれた情勢を分析しターゲットを絞り込み、データをもとに戦略を練って果敢に挑めば、勝てないことはないと確信をもっているのは、このときの成功体験がベースになっています。