地方局のアナウンサーから史上最年少の36歳で福岡市長に就任。
逆風のスタートから、いかにして福岡を「最強」と言われる都市に改革していったのか?
2018年11月の市長選では28万票以上を獲得し、
前回の市長選(2014年)に続いて史上最多得票を更新した。
しかし、そこに至るまでの道のりは、第1回の記事のとおり、決して平坦なものではなかったという。
新しい挑戦を続けるためには、時には規制を取り払うことも必要だ。
博多駅前道路陥没事故の復旧や、熊本地震の際のSNS活用方法をはじめとした取り組みで注目を集める高島市長は、まさしく福岡市の【経営】者だ。そんな彼の仕事論・人生論が詰まった、初の著書『福岡市を経営する』(ダイヤモンド社)から、その一部を再編集して特別公開する。
<構成:竹村俊助(WORDS)、編集部、著者写真撮影:北嶋幸作>
新しいことを取り入れるということは、
これまでの仕組みを打ち壊すこと
今は時代の変革期です。新しいテクノロジーやビジネスモデルが続々と生まれています。しかし日本では、社会や制度が窮屈に固まってしまっていて、それらを取り入れる「すき間」がありません。制度疲労を起こしているのです。
新しいテクノロジーやビジネスモデルを行政が理解し、積極的に取り入れ、環境整備をすることは、社会にとって大きなメリットをもたらします。
ただ、新しいことを取り入れるということは、これまでの仕組みを打ち壊すことにもつながります。よって新しい取り組みは、間違いなく既得権者からの反対にあいます。彼らのライバルを市場に入れることになるからです。
「規制」とは「安全を守る」という点で大義はあるのですが、一方で「新しい発想やイノベーションを阻む壁」となって、既得権者の利益を守る一種の「砦」の役割を果たしていることも事実です。規制をすることによってイノベーションが阻まれ、競争のない環境で既得権者が市場をずっと独占してきたのです。
既得権者は、組合を作って発言力を高めたり、選挙運動に協力して議員を支援したりすることで行政組織に圧力をかけ、制度や規制が変えられないように取り組みます。
会社やそこで働く社員を守ろうという動機は理解できます。ただ、生産性を向上し、社会課題を解決し、持続可能な社会に変えていくには、そこを突破しなければならないのです。
日本ではこれからさらに高齢化が進み、人口が減っていきます。一方で、中国をはじめとするアジアはイノベーションの社会実装に積極的で、急速に生産性向上が進んでいます。日本が日本人どうしの揉めごとに時間を使ってもたもたしているあいだに、世界が激変し、気づけば「浦島太郎」になってしまうのではないかと危惧しています。「安全を守るため」という規制のために国が沈没しては笑えません。
一定の安全をきちんと担保しながら、イノベーションを社会に実装していく。
国には期待しますが、他者に「べき論」を期待しても何も変わらないでしょう。国家戦略特区に選ばれている福岡市としてもその意識を強く持って、自分たちにできるチャレンジを続けていきます。