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 米国と中国の対立は和らぐどころか悪化する一方かもしれない。

 この2超大国は貿易紛争で注目を集めてきたが、他の分野でも対立が激化しつつある。米政府は、投資とインフラ融資を通じて世界中に影響力を拡大する中国政府の動きに対抗しようとしている。

 南シナ海では領有権を主張する中国をけん制するため、米軍の艦船や航空機が日常的にパトロールを行っている。折しも中国は軍事支出を拡大している。また米トランプ政権は、中国が特に米国企業の技術を入手するために用いている方策を妨害するために、さまざまな手段をとっている。

 双方とも相手の攻撃的姿勢を非難しているが、トランプ政権は特に強い行動に出ている。対中強硬姿勢が歴代政権と大きく異なり、新たな強硬姿勢が当分続くことを示すためだ。

マイク・ペンス副大統領は10月に保守系シンクタンクのハドソン研究所で行った政策講演で「歴代政権は中国の行動をほとんど無視してきており、多くの場合、その行動に手を貸してきた」と主張し、「こうした日々は終わった」と述べた。

エスカレートする手段

 2超大国の対立の中心にあるのは、米国の貿易赤字は米国の富の喪失に等しいというドナルド・トランプ大統領の信念である。米国の貿易相手国の中で中国は最も優位にあり、対米貿易黒字額は年間3750億ドル(約42兆3000億円)に上る。

 トランプ政権はこうした不均衡を是正するため、中国からの2500億ドル相当の輸入品に制裁関税を課し、一方の中国は米国からの輸入品に報復関税を課してきた。米産業界はこうした関税措置について、国内市場と消費者にとって利益より打撃が大きい手法とみなし、総じて不快感を示している。

 週末の20カ国・地域(G20)首脳会議の閉幕後、中国と米国は貿易戦争の一時休戦で合意し、米側は制裁関税の税率引き上げ計画を先送りした。これまでほぼ解決不可能とみられていた一連の問題について両国が協議することになったが、米国が設定した交渉期間はわずか90日だ。

 米国のさまざまな利益団体のうち、産業界は中国に味方して当然だと長年みられてきたが、トランプ政権の動きに直面する中で中国擁護の姿勢が弱まっている。主な理由は、米国の技術を入手しようとする中国政府の政策に不満が蓄積していることだ。こうした技術の中には軍事的に利用できるものもある。

 中国政府は、外国企業が巨大な中国市場へのアクセスを得る条件として、中国の提携相手と技術を共有することをさまざまな手段を使って求めている。また、中国企業が米国の技術を盗んだり、中国企業の購入を阻止するプロセスの迂回(うかい)を試みたりするケースもある。

 中国が米産業界の支持を失ったことは、米中間の緊張が今後何年も続く可能性があることを示す兆候だと見る向きもある。無党派の非営利団体「アジア・ソサエティ」の中国問題専門家オービル・シェル氏は「中国の政策を支持する最後の集団がビジネス界の人々だった。ビジネス界が『不支持』の側に移ったとき、潮目が変わった兆候を私は強く感じた。これを元に戻すことは非常に難しいだろう」と語る。

 トランプ政権はこの変化を利用して、最近新たな計画に着手した。輸出管理や訴追などの手段を使い、中国の知的財産窃盗に対抗し始めたのだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先月、関係者の話を引用してこれを報じた。

 新たな戦略の第一歩は、商務省と司法省が中国国営の半導体メーカーを締めつけるという形で表れた。関係者によると、米政権はこのメーカーが米半導体大手マイクロン・テクノロジーから企業秘密を盗んだとし、それが自国の半導体業界構築を目指す中国政府の取り組みの一環だったと非難した。

 一方で、財務省率いる省庁間委員会の対米外国投資委員会(CFIUS)は、国家安全保障の脅威になると思われる中国のハイテク分野での取引を阻止する上で大きな役割を担っている。その対象には、中国企業が関わっていないが米中関係に影響をもたらしかねない案件も含まれる。

 CFIUSは今年、シンガポールの半導体大手ブロードコムが米同業のクアルコムを1170億ドルで買収するのを阻止するようトランプ大統領に助言した。この際、中国の華為技術(ファーウェイ)が通信機器業界で優位に立っていることを引き合いに出した。

 この案件に関わる企業はどちらも中国企業でなかったが、CFIUSはこの取引がクアルコムを弱体化させる恐れがあることを懸念した。クアルコムは無線技術の特許をめぐりファーウェイと競合関係にある。新たな施策が共和、民主両党の幅広い支持を得て議会を通過したことを受け、CFIUSは今後、前例がないほど多くの案件を見直す予定だ。特に中国のハイテク分野の取引に焦点を当てることになる。

人権問題

 米中両国は、人権問題を含む政治的な問題でも対立を強めている。中国の人権問題などを調査する連邦議会の超党派委員会の委員長を務めるマルコ・ルビオ上院議員(共和、フロリダ州)と、上院外交委員会のメンバーであるボブ・メネンデス議員(民主、ニュージャージー州)は先月、中国・新疆ウイグル自治区に住む少数民族の人権政策に関する法案を提出した。同法案は、同自治区のウイグル族――大半はイスラム教徒――のうち約100万人が中国当局によって強制収容所に収監されているとみられることや、米国籍を持つ人や米国在住者を中国共産党が脅迫しているとされることに対応したものだ。

 法案は、ウイグル族の人権問題を取り扱う新たな役職を米国務省に創設すること、ウイグル族抑圧に対する制裁措置の適用、米国籍を持つ人や米国在住者が家族の失踪や拘束に関する情報を提供できるデータベースの構築――などを提案している。

 二国間の緊張は軍事面でも高まりつつある。特に南シナ海で顕著だ。中国中央軍事委員会は今年に入り、沿岸警備を担当する中国海警局を直接の指揮下に置き、南シナ海での警備を強化している。

 米議会指導者に超党派で選ばれた専門家の委員会は、最近の報告書で、中国が沿岸警備隊を「威圧行為の手段」として利用することに関し、国土安全保障省に分析を指示することを議会に提案している。

 米中間の問題には複数分野にまたがるものもある。例えば、中国共産党は米国の大学の技術を狙い、学問の自由を脅かしているが、米政府はこうした大学を保護するための政策策定に苦慮している。この問題がとりわけ難しいのは、門戸開放は米国の学術制度の誇りであるうえ、多くの中国人学者が米大学に専門知識と資金をもたらしているからだ。

 オーストラリア政府系の無党派シンクタンクがまとめた最新の報告書によれば、中国の軍の科学者は、時にその所属を明確にしないまま、米国などの技術先進国の学者との共同研究を著しく拡大している。分野は量子物理学、暗号解読技術、自動運転技術などだ。

 ペンス副大統領は先の演説で、「中国は経済の自由化により米国や世界との連携を強めることになると米国は期待していた」と述べた。「しかし中国は経済的侵略の道を選び、その結果、増大しつつある軍をつけあがらせてきた」