まいてら賞は「ご先祖」に
今回の受賞2件は、仏教界でも若手のクリエイティブなお二人が選ばれました。
まずは、京都の龍岸寺。お寺の掲示板というと、瓦屋根のひさしがかかったものに標語がピンでとめてあるタイプが一般的ですが、こちらのお寺のそれは黒板です。書くのも消すのも気軽にできる点がユニークです。
ご住職の池口龍法さんは、京都大学で仏教学を研究し、前回ご紹介したフリーペーパーの「フリースタイルな僧侶たち」を創刊するなど、若い人たちと仏教のご縁づくりに熱心な方です。「ナムい」、「ナムラー」といった言葉を生み出した人でもあり、また、「てら*ぱるむす」というアイドルをプロデュースするなど、実に多彩な才能を発揮されています。
「ご先祖あっての私たち。命のご縁に感謝しましょう」(池口住職)と、旧暦のお盆に合わせてこの標語が掲示されました。
こちらの賞をご提供いただいた「まいてら」は、お寺選びのポータルサイトです。「まいてら」を運営している井出悦郎さんは、銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、最近では(一社)お寺の未来総合研究所を設立されています。
井出さんはこのように講評しています。
「『生活者に分かりやすく、お寺の思いも端的に伝わるもの』という観点で選ばせていただきました。家族の形が変わり、個人化する時代でも、数多のご先祖による連綿とした命のリレーがあってこその我が身という当然の事実に、端的に気づかさせていただく標語だと思います」
ちなみにこちらの標語は、先日放送された「タモリ倶楽部」でも取り上げられ、反響をよんでいました。
寺子屋ブッダ賞は「初心」に
お寺の前に“初心”をお忘れの方がおられます
お心あたりの方はぜひお寺にお参り下さい
第16回でご紹介しましたが、拾得物をうまく利用した素晴らしい作品ですね。こちらの標語を投稿された松崎智海さんは、2017年の夏に「お焼香ファサー住職」としてSNSをにぎわせたことでも有名ですが、本業は北九州市にある浄土真宗本願寺派の永明寺のご住職です。この標語をつくるきっかけとなったのは、お寺の前に偶然落ちていた1枚の「初心者マーク」でした。投稿者として、こうコメントとしていました。
「今朝、お寺の前で『初心』を拾得しております。お心当たりの方はぜひお寺にお参りください。(^^)拾得物の保管(掲示)は7月末までですが、いつでも皆様のお越しをお待ちしております。」
永明寺の掲示板はいつも非常にユニークで、オリジナルなポスタータイプのものも多く作られています。フレディ・マーキュリーばりにマイクパフォーマンスをしている様子など、詳しくはご本人のツイッターをご覧ください。
「日常の全てが道場であることを思い知らされる名作です。一本!」という講評と共にこちらを選んだ「寺子屋ブッダ」は、お寺イベントの情報サイトです。また、お寺や仏教に関係した様々なイベントを開催しており、主宰者である松村和順さんは最近では地域貢献に積極的な寺院・僧侶の活動をサポートするプロジェクト「寺子屋学」をスタートさせています。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)