「南無」とは何か
「暑さ寒さも彼岸まで」とはいうものの、歴史的な猛暑が続いた今年は、10月に入っても夏日が続いています。
秋と言えば、食欲の秋です。収穫の季節であり、読書の秋でもあります。
今回は、「仏欲の秋!」のお話しです。「仏欲」という言葉があるわけではありませんが、仏さまとその教えである仏教を欲する気持ちについて考えてみたいのです。今回の2つの標語を書かれたのは、京都市にある龍岸寺のご住職で、10年前にフリーペーパー『フリースタイルな僧侶たち』を創刊した池口龍法さんです。
「ナムい心 忘るべからず」
ナムい心、とはいったいなんでしょう。ナムは「南無」と書きます。「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」の「南無」ですね。
インドの人は合掌しながら「ナマス・テー」とあいさつを交わします。これは「あなたに敬礼します」という意味の言葉です。この「ナマス」が「南無」の元で、「帰依(きえ)します」という意味になります。つまり、「み仏を敬い、帰依する心を忘れずに」ということですね。
心豊かに生きるために
次の標語は「物欲を忘れて 仏欲を抱こう」です。
仏に帰依するのは大切なことを教えてくださるからです。この標語はシンプルにそのことを「物欲を忘れて仏欲を抱こう」と表しています。
「物欲」はモノにとらわれる心です。仏教は「諸行無常」を説いて、心豊かに生きるために、この物欲を戒めます。移りゆく世界に目を背け、モノにとらわれれば、わたしたちは「いま、ここ」の豊かさと自由を見失ってしまうからです。
仏教に触れて自分のとらわれから自由になることを欲する「仏欲の秋」。みなさんもちょっと立ち止まって考えてみませんか。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)