彼岸寺賞は「行き先&往き先」に
今回の2件はいずれも、広島市中区八丁堀という繁華街のど真ん中にある浄土真宗大谷派の超覺寺に掲示され、投稿されたものです。ご住職の和田さんは、週に2回はオリジナルな新作を張り替えるというほど掲示伝道に熱心な方で、この連載でもすでに5回(第1回、第8回、第11回、第14回、第23回)にわたって掲載いたしました。投稿作品自体は30本ほどあります。この2件はいずれも初のご紹介です。
最初にご紹介するのはこちら。
行き先をググれば行き方が分かる。
往き先を念ずれば生き方が分かる。
「若い人に見てもらおうという下心があります(笑)。カタカナを使えば見てもらえるかな」とご住職は説明していました。
「ググる」というのはグーグルを使ってインターネット検索することで、道案内の役割をグーグルマップがしてくれるということに対比して、生き方を教えてくれるのは浄土往生を念ずるという浄土教の教えなのだ、というお話です。
「お浄土に往けるんだと信じられたら、後は楽です」と住職はツイッター上でコメントしています。
こちらの標語に賞を授与した彼岸寺は、わたしも時々記事を書いていますが、インターネット空間で活動するバーチャルなお寺です。
フリースタイルな僧侶たち賞は韻を踏んだこの標語に
彼岸寺がネット空間なら、こちらの「フリースタイルな僧侶たち」がテーマとするのは「日常に仏教を」。元々は京都でのフリーマガジンの発行から始まった若手僧侶のグループですが、宗派を超えた僧侶と仏教ファンのコミュニティをつくろうと活動しています。
そんな彼らが選んだ標語がこちらです。
ほとけさま
ごせんぞさま
おてんとさま
おたがいさま
おかげさま
栃木県の足利で生涯、禅を学び書を書き続けた相田みつをさんの「おかげさん」に通じるような言葉です。5~6文字の言葉を連ねて軽快に韻を踏んでいますね。
自分の力だけでは生きられないという思いを基に、和田住職が仕上げた作品です。
「仏法を伝えたい」という思いで書かれた一言も大事ですが、今回は「日常にありふれた言葉からどう仏教を見出してもらうか?」という視点から一作品を選ばせていただきました。
「フリースタイルな僧侶たち」からは、このような選考の声が寄せられています。難しい仏教用語でなくても、心に響く標語はあるんですね。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)