誤解を反映してか、受診した際「風邪をひいたから、抗菌薬を処方してほしい」と医者に求める人はおよそ3割に達している。

 実際、この時期「風邪なのに、抗菌薬も出せないのか!」と医者に迫る患者のエピソードには事欠かない。医療者向けサイトに「抗菌薬を希望する患者への対処方法」なんて記事が載るほどだ。

 そもそも、一般的に風邪と呼ばれる症状を引き起こす原因の9割は、ライノウイルスやコロナウイルスだ。当然、抗「菌」薬を飲んでも意味がない。

 残る1割は細菌性のものだが、一般的な細菌のほかに「マイコプラズマ」や「クラミジア」など特殊な構造を持つ細菌が原因菌の場合が多い。こうした特殊ケースでは、原因菌を特定し、ピンポイントに効く抗菌薬を計画的に投与する必要がある。安易に汎用的な抗菌薬を飲み続けると、副作用ばかりか無駄に打たれ強い「薬剤耐性菌」を生み出しかねない。

 多少時間はかかるが、普通の風邪は自前の免疫力で治る疾患だ。はっきり言って、抗菌薬を飲もうが飲むまいが治るまでの時間は変わらない。一番の薬は十分な栄養と水分、そして「つらいだろうから、ゆっくり休んでね」という家族の愛情、である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)