イラン制裁法は米国国内法
域外適用は国際原則に反する

 また中国広東省の深センにある華為が、米当局に対し事実と異なる回答をしたとしても、その行為の現場が米国外、行為者も外国人なら、米国の裁判所の管轄権が及ぶのか否かも疑わしい。

 米国の「イラン制裁法」など一連の制裁法は米国の国内法にすぎず、それを米国の領域外で外国人に適用し、刑事事件として罰するのは、他国の主権を侵害するもので、国際法の原則に反する。

 これは例えば、日本の銃刀法を米国にいる米国民に適用し、拳銃を所持する米国人の日本への引き渡しを要求することは米国に対してできないのと同じだ。

 中国企業がイランにスマホや基地局を輸出しても、外国人同士の外国での行為である以上、米国がそれを訴追して処罰する権限はない。

 だが、米国は外国企業が米国の金融機関を通じて取引し、ドルで決裁するのを妨害することは可能だ。イランと取引をする企業、個人の在米資産の凍結もできなくはない。

 しかしこれは実質的には米国の国内法の「域外適用」であり、本来の制裁対象国ではない第三国やその国民に対する「二次的制裁」になる。

 それが容認され、先例となれば、例えば、将来、中国が台湾と取引する日本企業の在中国資産を凍結することも許される結果となりかねない。

通信情報の傍受などで
米国とカナダは密接な関係

 カナダは今年9月末、トランプ大統領の圧力に屈してNAFTA(北米自由貿易協定)に代わる新貿易協定をのんだものの、「アメリカファースト」政策には基本的には批判的だ。伝統的にも米国の大国主義への反発が強い。

 それなのにカナダが、「イラン核合意」から離脱し1国だけでイラン制裁を復活したトランプ大統領の米国に協力し、華為の孟晩舟CFOを拘束したのはなぜなのか。

 理由の1つとして考えられるのは、「通信情報」(電話やインターネット通信の傍受、コンピューターへの侵入など)での米国とカナダの密接な関係だ。

 第2次世界大戦中の1940年米国と英連邦諸国はドイツと日本の無線通信の傍受と暗号解読を一体となって行うため「UKUSA」(英米協定)を結んだ。

 現在も米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン5ヵ国の情報機関は「エシュロン」と称される傍受システムを共同で運用している。

 米国とカナダの情報機関の横のつながりにより、カナダは孟晩舟CFOの拘束に動いたのかもしれない。