いつもお腹をすかせて玄関で待っている猫がいないのを不思議に思って部屋に入ると、奥のほうから野太い声が突然。
ビャーオォ!
あれほどクローゼットの中は禁止しているのに、いつの間にどのタイミングで入りこんだのか。
真っ暗な中で丸一日過ごすなんて、私ならできない。
いったんドアが閉まったら自力脱出は無理だと、飛び込む前にちょっとでも考えなかったの?
こんなことなら帰り道でコンビニなどに寄らないで、まっすぐ帰ってやればよかった。
いや、出勤服は前日に用意するのが基本だと、私はひとしきり反省しながらエサをほおばる猫をながめたのだった。
東京都生まれ。東京学芸大学教育学部初等教育国語科卒。在学中に文部省給費にてパリINALCO(国立東洋言語文化研究所)留学。リサンス(大学卒業資格)取得。日仏両国で日本語を教える傍ら翻訳、通訳に携わる。地域猫ボランティア活動に関わり、これまで多数の猫を預かり里親へ橋渡ししてきた。現在、2匹の愛猫とともに暮らしている。