一方、現在も続く景気の回復局面は政権交代のあった12年12月に始まった。そして13年4月に日本銀行が大規模な金融緩和を決めると急速な円安が進行。グローバルに展開する日本メーカーの円換算した海外収益を押し上げた。またコスト低減の取り組みのほか、世界経済の拡大も追い風にしながら企業収益の拡大が続き、17年度の利益項目はいずれも1960年度の統計開始以来の最高となった。

 売上高営業利益率やROE(自己資本利益率)なども上昇傾向をたどってきており、ニッポン株式会社はこの数年間、筋肉質な収益体質を築いてきたといえる。

 もっとも、安倍政権が唱えてきた「経済の好循環」の観点に立つと、企業収益改善から先のシナリオは必ずしも思い通りとはなっていない。というのも、アベノミクスは大規模な金融緩和による円安などで企業収益を改善させ、設備投資や雇用の増加、さらには賃上げによる消費拡大を実現するとのサイクルを狙ったものだった。

 それが実際はどうなったか。設備投資(ソフトウエアを除く)より、過去最高水準に積み上がった現預金や内部留保の増加幅の方が大きく、収益向上の割に積極的に投資へ動いたとは言い難い(図2)。

 しかも直近では、12月3日に発表された7~9月期の法人企業統計で設備投資が前期比(季節調整済み)4.0%減と、5四半期ぶりのマイナスに沈んでいる状況だ。

 先の内部留保とは企業が稼いだ利益を株主の配当などに充てず、社内に残した利益の蓄積のこと。貸借対照表(BS)に内部留保という項目はなく利益剰余金として計上され、株主資本の一部を成す。

 内部留保をめぐっては「利益をため込んでいる」との反発をはじめさまざまな議論があり、政府内で「内部留保課税」が検討され話題に上った時期もあった。BS右側にある内部留保は左側の資産において、増加ペースが鈍いとはいえ工場設備といった固定資産などと形を変えている面もあり、一概に批判が当てはまるわけではない。

 とはいえ日本企業は金融危機の教訓などから、銀行からの信用を得るために内部留保の蓄積を重視してきた。少なくとも増配を要求する株主の立場から見ると、ニッポン株式会社に蓄積してきた内部留保が「過剰」と考えるのも無理のない規模にまで膨らんでいる。