私は陸上自衛隊での同様の訓練では遅れをとることはありませんでしたし、ある程度自信がありました。ただし、アメリカのグリーンベレーでは、日本の場合とは歩く距離がまったく違います。いつも通りにやっていては制限時間内のゴールは不可能だと考え、開始から一気に飛ばしました。

 ところが途中、地図にないイバラ地帯に突っ込んでしまい、手も足もイバラに捕らえられて動きを止められてしまう事態に……。ナイフで道を切り開いたのですが、何とか抜け出す頃には、とんでもない時間をロスしてしまっていました。最終ポイントまでは約8キロ。全力疾走で間に合うかどうかのギリギリのラインでした。

 崖を転がり降り、登りはまるで獣のように両手両足で駆け上がりました。最後は崖を飛び降りてゴール。他の外国人留学生は、全員失格していました。

人は意志の力さえあれば
ほとんどのことは成し得てしまう

 こうして誰もが無理だと言ったトレーニングをクリアしていくうちに、周囲の目も変わってきました。「すぐに音をあげるだろう」と言っていた若い兵士たちから、敬意を払われるようになったのです。

 訓練は過酷を極めました。それまでも日頃から鍛錬していたので、その日一日の訓練は何とか乗り切ることができます。ただ、若い頃と違うのは、回復力が下がっていることです。一晩では戻らないので、そこは気力でカバーするしかありません。

 体力はもちろん大切なのですが、最終的には意志の力です。私は全過程を終えるまで、「死んでも日本に帰らない」と決めていました。本当に死ぬかと言えば、人間はなかなか死なないものなのです。

 私はこのときの経験で、「人は意志の力さえあれば、ほとんどのことは成し得てしまうものだ」と思いました。私が特別なのではなく、自らの価値観から設定した明確な目標があったからできたことです。

 目標を実現しようという強い思いによって、人はとんでもないストレスやプレッシャーであっても跳ね返して力にすることができる。

 私はそう確信したのです。

(終わり)