気軽にウイスキーを飲める場としてスナックは定着するか(写真はイメージ)

 バーやレストランなど外食業態の提案業務も手がけるサントリーが、スナック業態の開発に乗り出している。都内で実験店舗をすでに15店展開、今後も拡大させる。

 スナックというと、会計が不明朗なイメージがあり、店舗数が全国で毎年減少を続ける不況業態の典型だ。なぜここでそのスナック業態の開発に踏み出したのか。

 その理由はウイスキーの市場拡大だ。「角ハイボール」で世の中にハイボールブームを巻き起こした同社は、ウイスキーの味を覚えた消費者の次の“受け皿”を模索している。高級バーよりも入りやすく、気軽にウイスキーを飲める場所として、スナックに白羽の矢が立ったのだ。

 閉店したスナックの設備をそのまま流用する居抜き出店で初期のコストを抑える。また、ボトルを入れていれば5000円程度で時間無制限で飲めるなど「明朗会計」を打ち出す。店舗運営はオーナーに任せ、同社は従業員の教育やメニュー開発、オーナーに水や炭酸水を無料で提供するなど運営支援を行う。

「ウイスキーは提供の仕方によって味の差が大きい。この技術をしっかりサポートすれば、ハイボールブームを支えた、バーやスナックの文化を知らない若い世代を取り込める」と土田雅人・サントリー酒類執行役員は期待を寄せる。

 消費者がかつてスナックなどで「おいしくない高い酒」を飲まされ、ウイスキーへの印象を悪くしたことは、市場が低迷した理由の一つでもあった。そのきっかけとなった業態を生まれ変わらせるという逆転の発想は興味深い。ただ、新しいウイスキーの潜在顧客を取り込むことができるのかは、未知数だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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