Aさん 「中途のキャリア採用のメンバーを見て、本当にすごいなと思いまして…」
S課長 「例えば、どんなことですか?」
Aさん 「将来のキャリア形成に向けた勉強だといって、社外のセミナーに参加したり、講座を受けたりしているみたいです。ああやって勉強してきたから、キャリア転職できたんですよね…。私は、そういった情報に疎いというか…」
S課長 「新卒からずっと同じ企業で働いていることだってすごいことだと思うけど」
Aさん 「うーん、そうかもしれませんけど…。課長は、どんなことをされているのですか?」
S課長 「私は、本を読んだり、社内の研修に参加したり、常に情報のアップデートはしているつもりだよ。あとは、社内で何か問題を起こさないように気をつけて、部長とうまくやっていけばいいかなと思ってはいるけれど」
Aさん 「そうですか…社外では何か勉強されているのですか?」
S課長 「社内が一番大事だろう!社外だったら資格の取得勉強くらいじゃないか?Aさんは、転職したいのかい?」
Aさん 「いいえ、それはありません。お忙しいところ、ありがとうございました」

自分の視点にないものは
部下にもアドバイスができない

 Aさんは、S課長に相談して悩みを解決する“突破口”を期待したものの、この日以来、ますますモヤモヤした状態に陥ってしまいました。さらに、キャリア転職してきたメンバーと自分とのスキルの差を気にして、大量の自己啓発のセミナーなどに申し込み、冬のボーナスをほぼ使いきってしまったのです。

 S課長にとって、新卒から入社して一生懸命まじめに働いているAさんからの相談に、自分の経験から、全てよかれと思ってアドバイスしたつもりでした。しかしAさんは、S課長の回答を聞いて、「社内にだけに目を向けていたら自分の居場所がなくなるのではないか」とますます不安になり、無計画な行動に出てしまったのです。

 今回の事例の問題点はいったい何でしょうか。それは、S課長が自分の体験と知識だけで答えてしまったことにありました。