そう考えれば、ソフトバンクグループが事業会社から投資会社に変化しつつある状況は、グローバルにオープンな環境で新たな技術の組み合わせを実現するためのプラットフォームの形成と見ることもできる。自らが要素技術開発の担い手にならなくても、技術と技術の繋ぎ合わせに必要不可欠なプラットフォームの提供者になれば、ビジネス全体のリーダーシップをとることもできるからだ。

イノベーションの定義を変える
孫正義氏のチャレンジ

 先日、あるメーカーの中堅社員の方が、「会社としてオープンイノベーションを標榜しているのですが、個別の案件になると、自社技術でないという理由で採用されないのです」と嘆いていた。日本企業はまだまだ20世紀の成功体験を引きずってはいないだろうか。

 20世紀においても、自社で開発したものにこだわることでイノベーションが阻害される現象を「NIH」(Not Invented Here/ここで発明されたものではない)症候群と呼んでいた。オープンな競争環境において、迅速で柔軟な対応が求められる現在、重度のNIH症候群にかかっている日本企業がまだまだあるのかもしれない。

 まずは意識を変えることだ。そして「孫正義氏がクールな経営者に見える」ようになってくると、日本のイノベーションの在り方が変わるのかもしれない。

 それともう1つ。日本人は「金儲け」にもう少し貪欲になってもいいのではないだろうか。繰り返すが、イノベーションがイノベーションである要件は、経済的な利益がもたらされること。技術的な成果を実現しただけで、満足しないことが重要なのである。

 少々話題が広がり過ぎたきらいはあるが、筆者は今回、ソフトバンクのIPOに鑑み、ふとこんなことを思った次第である。

(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 長内 厚)