「前年比○○%増」の前例踏襲目標は今すぐ捨て去ろう
経営計画を立てるということは、単純にすぐそこにある未来の姿を思い描くことなのですが、過去数字、たとえば「売上高は前年比10%増」などといった具合に立てることもよく行なわれています。
しかし、これからどうするかの実行指針を決めるのに、過去の数字はあくまで参考資料であり、多くを頼ってはいけません。過去の数字にとらわれすぎると失敗することが多いのは、多くのビジネスマンや経営者が経験していることだと思います。
毎年10%ずつ3年間成長できたので、翌年も10%増の計画を立てて失敗し、3年前の数字に戻ってしまった会社。デフレの影響で前年より5%ダウンする計画を立てていたが、期中でセールスミックス(売上品目構成)が大幅に変わり、死に筋商品が大化けして売れたのは良かったが、商品調達が間に合わず、大きな機会損失(得ていたであろう利益が、販売機会を失ったために得られなかった仮の損失)を出してしまった会社など、失敗例には事欠きません。計画を立てるには「過去数字」を捨て去って、ゼロから考えるべきです。
月次予算書は目標レベルの異なるものを2つ以上作る
予算や経営計画は普通、1つしか立てないと思われがちですが、2つ、あるいは3つ立てる会社もあります。
社員たちにハッパをかける意味と次の成長ステージにブレークスルーするための「大きな目標値」としての計画が1つめ。最低でもこの程度の売上高は確保する必要があるだろうという「最低ライン」の計画が2つめ。その2つの真ん中のライン、すなわち「落ち着きどころ」の計画の3つです。3つも存在すると途中でわけが分からなくなるので、年度のスタート段階で参考値程度に作っておくのがお勧めです。
2つの場合は、各部門の現場責任者と、コミットメント(約束)として握った数字の積み上げ計画と大きめなチャレンジ数字の計画を立てます。上場会社はこのように2つ立てて、前者の数字、つまり、より保守的な数字を来期の業績予想として決算短信に記載するケースが案外多いと思います。決算短信に記載するということは、対外発表して社外の利害関係者に「来期はこの目標を必達しますよ」と宣言するわけなので責任重大です。