主流派経済学は、現実の経済からあまりにも遠い“知的遊戯”であるとの言及は多い。しかし、少なからぬ批判は経済学への無知や誤解に基づく内容の薄いものにとどまっていた。著者は、P・クルーグマンやジョセフ・E・スティグリッツらノーベル経済学賞の受賞者による現代経済学批判が盛んになるはるか以前から、正統派経済学の問題点を鋭く指摘してきた。その功績はあらためて注目されるべきだろう。
経済学的な思考法の柱とも言える過度の数学的厳密性、統計的有意性の乱用、社会工学的な発想の問題点が整理されている。中には首肯し難い主張もあるが、今後の経済学を考えるに当たって必要な注意点を教えてくれる。また、訳者の景気探偵こと赤羽隆夫氏の名前も懐かしい。
(明治大学政治経済学部准教授 飯田泰之)