「課長ってすごいな。よし、俺も見習って頑張ろう」

 A課長は、自分を慕っているBをますます気に入り、熱を上げた。そして同行活動が終了する頃、思い切ってBに聞いた。

「ねえ、B君は今彼女いるの?」
「いえ、今いなくて募集中なんです」

 それを聞いたA課長は、急にはしゃいだ声で「じゃあ、私が彼女に立候補しちゃおうかな」と言った。

 Bは冗談だと思い、笑って受け流した。ところが、その対応がかえってA課長の心に火をつけた。

「これは脈があるに違いないわ…」

 この一件以来、A課長はBに執拗に迫るようになった。用事もないのにBの席へ行き、「B君、疲れたでしょう?」と言いながら肩や腕をもんだり、わざとBの顔の横に自分の顔を接近させたりした。

 また週に2回、Bにだけ残業を命じ、自分は指導する立場として2人だけ居残り。Bに自分の仕事を30分程手伝わせた後、2時間は仕事に関係ない話を延々と続けた。Bは上司の命令だから仕方なく従っていたものの、A課長への尊敬はすっかり消えていた。

 Bが入社して3ヵ月が過ぎた。A課長は相変わらずBにからみ続けた。いよいよ困ったBはA課長の席へ行き、迷惑そうな顔で言った。

「課長、皆の前でマズイですよ。それに課長にはご主人がいらっしゃるから」

 ところがA課長は平然としていた。

「うちの旦那はダメよ。気に入らないことがあるとすぐ手を出すの。このあざを見て。1週間前、旦那に殴られたのよ」

 スカートをたくし上げ、太ももについた大きなあざをBに見せた。目のやり場に困ったBが下を向くと「ウフフ…、B君ってカワイイ」と微笑むA課長。その様子を垣間見た周りの社員たちも苦笑している。

 Bはその後、C部長に相談するものの、「B君がイケメンだからだよ。上司に気に入られるのはいいことじゃないか」とまともに取り合おうとしない。

 Bは深く悩んだ。冗談ならまだ笑って交わせるが、A課長に皆の前で体を触られるのは我慢ができなかったのだ。