2016年度の介護保険の利用者は全国で632万人。65歳以上人口で見ると、18%が要介護・要支援認定を受けており、いまや私たちの暮らしを支えるために、なくてはならない制度となっている。
介護保険は、高齢者介護の問題を解決するために作られたものなので、利用できるのは、原則的に65歳以上で介護が必要になった人だけだ。
だが、40~64歳でも要件を満たせば、介護保険は利用できる。2016年度は632万人の要介護・要支援認定者のうち、13万人が40~64歳の利用者となっている。
とくに、がんの末期や脳血管疾患で在宅療養をする場合などは、介護保険が強い味方になる。今回は、40~64歳で介護保険を利用するときの注意点を見ていきたい。
介護保険は高齢者だけではなく
若年世代の介護の負担も軽減
公的な介護保険がスタートしたのは2000年4月。それまで家族が担ってきた高齢者介護を社会化し、この国で暮らす人みんなで保険料を負担し、社会全体で支えていくことになった。
制度が作られる過程で問題の一つになったのが、「何歳以上の人を対象とするか」ということだった。
おもに介護サービスを受けるのは高齢者だが、介護保険ができれば、若年層にも親の介護の負担が軽くなるというメリットがある。『介護保険制度史――基本構想から法施行まで――』(社会保険研究所刊)によると、制度の設計当初から「若年世代については、被保険者としての保険給付を行うか否かにかかわらず、世代間連帯や老親に対する扶養責任、さらには家族介護の社会化により介護負担が軽減されるという受益があることを踏まえ、一定の負担を求めるべきという点では関係者の意見がほぼ一致して」いたという。
介護保険給付費の半分は税金が投入されており、残りの半分は加入者の保険料で賄われることになっている。だが、公的年金が収入の大半を占める高齢者から集められる保険料には限界がある。そのため、財源論からいっても、現役世代の保険料負担は必須ともいえる。
だが、社会保険という形で運営するためには、保険料を拠出する人には給付を受ける権利もある。そこで、認知症や脳血管疾患などで要介護状態になるリスクが起こり出す40歳以上の人に加入を義務づけ、彼らも一定要件を満たせば給付が受けられるようにして、介護保険は運営されることになったのだ。