Aさん(55歳・会社員)の母親、ウメさん(80歳)は、認知症で特別養護老人ホーム(特養)に入所している。ウメさんの収入は国民年金78万円だけなので、介護費用のほとんどをAさんが負担している。
介護保険で受けられるサービスは、その人がどのくらい介護が必要かによって異なるが、ウメさんは1ヵ月に約35万円分の介護サービスを受けており、その1割の3万5000円を自己負担している。
この他に、部屋代と食費が10万500円かかるので、ウメさんの1ヵ月の介護費用は合計で13万5500円だ。
ところが、同じように特養に入所しているBさん(55歳・会社員)の母、マツさん(80歳)の介護費用を聞いて、Aさんは驚くことになった。
マツさんも1ヵ月に約35万円分のサービスを受けているのだが、自己負担するのは1万5000円だという。部屋代と食費は3万6300円で、介護費用の合計は5万1300円だ。
同じような介護サービスを利用し、年齢や家族構成、世帯年収も同じなのに、ウメさんの1ヵ月の介護費用は、マツさんより8万4200円も高い。なぜ、このような差が出ているのだろうか。
その謎を解くキーワードが、住民票の「世帯分離」だ。
同居する家族の収入をもとに
計算される介護保険の負担
介護保険は、高齢者の介護を社会で担うために2000年に始まった国の制度で、40歳以上の人が加入して所得に応じた保険料を負担する。原則的に65歳以上で介護が必要な人が利用できるものだが、40~64歳の人でも加齢が原因で起こる病気(認知症や脳血管疾患、末期がんなど)で介護が必要になった場合は利用可能だ。