超できる年下妻
営業成績を比べられ

 Aさん(40歳男性)は社内結婚である。2人とも金融関係の会社に勤める営業員だが、3歳年下の妻は結婚前から営業成績がすさまじかった。毎月全国で指折りの数字をたたき出しては当たり前のように表彰の常連、キャラも立っていて、感心される類のものから笑い話まで語られるエピソードが山とあった。

 対するAさんは人に「なんだかぼんやりした人だな」という第一印象を与える人物である。昼行灯(ひるあんどん)、とまでは言わないが、その雰囲気を揶揄(やゆ)されることもある。しかし無表情に装われた仮面を一枚剥げば、そこに高速回転する高性能CPU脳みそが見つけられるはずである。わかっている人はAさんのその本質を見抜いていた。

 そもそもAさんの成績だって決して悪くはないのである。むしろ芳しいといってよい。結婚後は別々の支社に異動となったが、Aさんは新しい支店のエースを任される立場となった。

 しかし妻が華々しすぎた。並んで比べるとどうしてもかすみがちになる。社内の人間からは「奥さんが光り過ぎていてAさんは正当な評価が受けにくい」と評されることもあった。妻はAさんの約1.5倍ほどの年収である。

 妻との収入の差はそのまま会社の評価、すなわち営業員としての能力の差である。同じ会社に勤めているだけに、この数字はごまかしが利かない、紛れのないものとして突きつけられた。

 無表情から「そのことに関しては、特に気にしていないのではないか」とうわさされていたAさんだったが、実際はかなり思い詰めていたらしい。

「結婚したては素直にうれしかった。あれだけ目立っている女性が奥さんになってくれるなんて自分は幸せ者だと。尊敬できたし、誇らしかったし、ライバルとして負けないようにがんばらなくてはと自然に思えた。このころは収入の違いを意識することはあまりなかった」(Aさん)