また、今回手術時に用いられた麻酔薬のプロポフォール(*4)は副作用に幻覚が認められやすく、学術的な文献にも「(誰かに)触られた」「自慰をしている」「性行為を強いられた」等の幻覚体験が報告されている。

裁判があった東京地裁
裁判があった東京地裁 Photo:M.F.

 筆者が取材した、せん妄に関する専門家らは「特に性的な幻覚は生々しく、記憶に刻まれやすい」と説明し、A子さんが「乳房を触られた」と主張することはやむを得ないだろうとの見解も示す。

 わいせつ事件は罪が重い。今回の準強制わいせつ罪の場合は6ヵ月以上10年以下の懲役となる。

 医師と弁護士の両方の資格を持つ、浜松医科大学医学部(医療法学)の大磯義一郎教授は「今回の事件は、A子さんは意識が清明とはいえない状態での出来事とみられ、被害者女性の証言は真実がどちらにせよ虚偽には当たらないでしょう。しかしながら、事件の全体に疑義が残ります。満員電車内での痴漢とは異なり、医師は診察をするために裸の女性患者の乳房や陰部を触る、それが仕事です。医師が安心して診察できるよう、公平な判決を望みます」と話す。

 病院では、できる限り、裸体の女性を診察する場合は女性看護師等の付き添いを基本としているが、現場関係者は「病院の日常業務の煩雑さを考えると、それが難しい場合も多い」と言う。

 被告人の外科医には検察側から懲役3年の求刑が言い渡された。2月の判決が注目されている。

*4 今回の全身麻酔手術で使用された麻酔薬はプロポフォール、笑気ガス、セボフルランだった。

◆訂正
 記事初出時、記事末尾の注釈において「*4 今回の全身麻酔手術で使用された麻酔薬はプロポフォール、笑気ガス、セボフルラン、ラリンゲルマスクだった。」とありましたが、ラリンゲルマスクは麻酔用の医療機器であり麻酔薬ではありませんでしたので、削除・訂正させていただきます。(2018年1月10日)