さらに、山川が長期的な関係が続くという期待の下、会社に忠誠を尽くしている様子を理解できる場面があります。例えば、山川は中井に対し、サラリーマンが出世する秘訣として、以下の3つを説きます。

第1条 社長の娘と結婚すること
第2条 労働組合の幹部になること
第3条 社長の弱みをこの手に握れ

 あまりに現実離れした話ですが、映画の演出なのでご容赦ください。ここで言う第1条は陽子の関心を引く争奪戦、第3条は社長の愛人、紅子をめぐるドタバタにつなぐ布石なのです。

長期雇用を信じて
会社に忠誠誓う

 ただ、第2条だけが現実味があります。つまり、労働組合の幹部となり、労使交渉などで会社の上層部とパイプを作ることが「出世の早道」と言っているのです。これは日本型雇用慣行の「3種の神器」の1つが反映されていると言っていいでしょう。

 その後、山川は第1条を達成するために陽子の気を引こうとしたり、第3条を満たすために紅子を使った接待攻勢を仕掛けたりするのですが、いずれも失敗。米国企業との契約を取れなかった責任を取る形で、会社から謹慎を命じられます。

 そして、ヤケ酒をあおる山川は、場末のバーでサラリーマン(植木等)と意気投合、勤め人の悲哀をミュージカル調に嘆き合う際、そのセリフに「出世街道 年の順」「退職金が生きがい」といったセリフが見受けられます。これらは日本型雇用慣行の下、長期的な関係が続くことを期待しつつ、勤め人が会社に忠誠を尽くしている様子を示しています。

 さらに、メンバーシップ型雇用の下、社員が会社の命令を無制限に聞かなければならない場面も出てきます。山川の後輩、中井は紅子を巡るドタバタに巻き込まれ、山奥のゴルフ場建設事務所に異動、いわゆる左遷を命じられます。この際、中井は特段の異議を申し立てることなく、転勤を受け入れます。このほか、日曜日出勤を是とするセリフがあるので、会社に尽くす長時間労働が当然視されています。いずれも、無限定に会社の命令を聞かなければならない勤め人の実情を反映しているといえます。