妻は当初笑っていたがCさんの落胆ぶりに胸を痛め、また自分の言動に責任を感じ、「パパはもう風邪が治ったからばい菌はいないよ」となだめるも納得しない娘に「パパにはもうなんの危険性もない」ことを伝えるべく、「ママもパパと一緒にお風呂に入る」を実行して、身をもってパパの安全性を娘に証明してみせたのであった。

テンションを上げる妻
インフルは楽しむべきイベント?

 Dさん(41歳男性)は風邪を引くと憂うつになる。特にインフルエンザは第一の警戒対象なのだが、3~4年に一度のペースで罹患してしまうので憂うつエピソードを豊富に持っている。Dさんが床に伏せると妻のテンションが上がるのだが、感染力の強さと妻のテンションの高さが比例関係にあった。

“台風が来るとわかると盛んな様子になって家じゅうの雨戸を閉めてまわるお父さん”の目撃談が各所で確認されているが(※筆者調べ)、Dさんの妻もちょうどそれと似たような心境であろうと察せられた。家を守るべき妻として、家族への感染を防ぐべく全精力で病原菌を寄せ付けないよう努力するのであった。この時、雨戸を閉めるお父さんとDさんの妻、彼らの脳はともに並々ならぬアドレナリンを分泌させている。

「自室で寝ていて、寒気がすごくなって『熱が上がってきたかな』と思いながら目を開けると、部屋の窓が全開になっていて、外に向かって季節外れの扇風機が回っているのに気づいた。妻の仕業で、ウィルスが蔓延した部屋の空気を入れ替えようとしているのだけれど、こちらは寒くてたまらない。重い体を引きずってやっとの思いで窓を閉め、また布団に戻って寝ていると寒気がしてくる。起きて見るとまた窓が開いている」(Dさん)

 Dさんが窓を閉めるであろうことを予想する妻が、窓が閉められていないかまめにチェックしに訪れているのだった。

 Dさんの妻は毎回違った趣向で感染対策を行った。

「ある時夜中に目が覚めると枕元に紙コップが置いてあった。水分補給をしろという妻のメッセージと見て、ありがたく思いつつコップを飲み干そうと傾けると何も口に入ってこない。目を開けて確認すると底にガムテープが貼ってある。外側から見ると底から糸が出ていて、ドアの外へと延びていた。先ほど気がつかなかったが紙コップの横にメモ書きが置いてあって、『会話は糸電話でしてください』と。

 妻はおそらく、内心自分の閃きに興奮し、ウキウキと工作を楽しんだに違いないと感じた」