ゴーン事件に学ぶ、経営につまずかない「企業統治」の仕組み作り
日産自動車カルロス・ゴーン元会長の逮捕を教訓に、これまでコーポレートガバナンス(企業統治)に無頓着だった企業は社内体制をどう整えるべきか。池尾和人・立正大学経済学部教授が解説する 写真:ユニフォトプレス

日産自動車カルロス・ゴーン元会長の逮捕は、経済界に大きな衝撃を与えた。ゴーン氏は拘留理由開示手続きを通じて無罪を主張するも保釈が認められず、事態は混迷の度合いを強めている。これまでコーポレートガバナンス(企業統治)に無頓着だった企業は、この事件を教訓に社内体制をどう整えるべきか。日本においてコーポレートガバナンス・コードの策定を主導した池尾和人・立正大学経済学部教授に聞いた(取材・文・撮影/ダイヤモンド・オンライン 副編集長 小尾拓也)

「企業統治」の意味を
正しく理解しているか

――ゴーン事件をきっかけに議論が盛り上がるコーポレートガバナンス(企業統治)ですが、企業にとってそれを徹底することの意義を改めて教えてください。

 誤解されがちですが、コーポレートガバナンスの仕組みを導入するだけで会社がよくなるわけではありません。企業関係者は、その本来の意義をまずきちんと整理して理解すべきです。

 私は金融庁と東京証券取引所が取りまとめ、2015年に適用が始まったコーポレートガバナンス・コードの策定において、有識者会議の座長を務めました。このコーポレートガバナンス・コードとは、上場企業が守るべき行動規範を示し、株主がその権利を適切に行使できる環境を整備するための企業統治の指針です。その目的は、企業のパフォーマンスを向上させ、株主などのステークホルダーに還元することです。

 ただ、企業のパフォーマンスに対して一義的に影響を与えるのはマネジメント(経営)であるというのが私の持論です。もしコーポレートガバナンスの体制に不備があっても、優秀なトップがうまく企業を経営すれば、パフォーマンスが向上することはあり得ます。リーダーが優秀であれば、むしろ下手な民主制よりも求心力の強い独裁制のほうが効率的でしょう。それゆえ、コーポレートガバナンスの整備と企業のパフォーマンスは、必ずしも連動しないケースがあります。

 とはいえ、経営者に立派で優秀な人が必ず就任する保証はない。会社の利益より自己の利益を追求する人や、無能な人がトップになったらマネジメントはおぼつきません。だから、適正な人が経営者になる確率を高めるための「品質保証」の仕組みとして、コーポレートガバナンスが必要となる。それが本来の意義です。

 また、ガバナンスが機能しているか否かは短期で判断するのではなく、中長期で見て「おおむね機能している」状況にもっていけるのが理想です。