ウォークマンPhoto:PIXTA

――筆者のジョン・D・ストールはWSJのビジネスコラムニスト

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 アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」はほぼ間違いなく、世界で最も価値ある商品だ。5000億ドル(約54兆2000億円)規模に上る同社ハードウエア事業の屋台骨であり、アプリを販売する「アップストア」の収益を支えている。消費者向けに製品を販売する世界の企業にとって今も「憧れの的」だ。

 だが、これまでの歴史を踏まえれば、米国人お気に入りのスマホであるiPhoneも、いつかは博物館に展示されているデジタルカメラや計算機、ポケベル、ソニーの「ウォークマン」、「パーム・パイロット」の隣に並ぶ日が来るだろう。iPhoneの消滅を想像することは難しいが、米国文化に深く根ざしているデバイスにも、時代の変化が急速に忍び寄ることはあり得る。

 コダック、ポラロイド、テキサス・インスツルメンツはいずれも、古い考えに固執してしまった近代の企業の例だ。ネットフリックス(すでに広告なしの動画配信という事業モデルへと変身を遂げている)からグーグル親会社アルファベット(売上高の86%を広告に頼る)まで、ハイテク大手は、同じ運命をたどらないよう、この痛々しい過去の教訓から学ぶ必要がある。

 アップルのヒット商品であるiPhoneが終わったという訳では全くない。iPhoneの売上高は、アップル全体の60%を占め、米フォーチュン誌が毎年発表する米国の上位500社リスト「フォーチュン 500」の96%を上回る水準だ。モルガン・スタンレーはアップルのハードウエア事業全般の価値を5450億ドルと推定しており、iPhoneはその大部分を占める。

  携帯音楽プレーヤー「 iPod(アイポッド)」、ノートパソコン「MacBook Air(マックブックエア)」、タブレット端末「iPad(アイパッド)」、そしてiPhone。アップルは新製品を次々に世に送り出し、2000年代の大半において、次の大ブームを演出する仕掛け人だった。アップルはいつも最初ではなかったが、同社の製品はどれも使いやすく、薄型でカッコよかった。

 だが、発売後のiPhoneブーム以来、次のヒット商品を生み出すことは一段と困難になっている。アップルは画期的なテレビ商品を出しておらず、腕時計型端末もそこそこ、音楽ではつまずいた。自動運転車や独自の動画制作を巡り多くの臆測も流れている。果たして、アップルの最大の武器は最大の弱点なのだろか。

 アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、最近のiPhone販売の動向について、アップルが転換点に差し掛かっている兆しだと認めている。投資家に向けた2日付の書簡にはこう記されている。「アップルは逆境に置かれる度に、自らのアプローチを見なす機会にしてきた」