2019年4月に罰則つき残業規制がスタートすることもあり、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。

あなたの部署は「健全」か「不健全」か?それを確実に見分けるシンプルな方法

「緊急ではないが重要な業務」を増やす

 あなたがマネジメントしているチームは「健全」でしょうか? それとも「不健全」でしょうか?

 これを認識しておくことは、チームの「働き方」を変えるうえで非常に重要なことです。そして、チームの健全性を確認するために、非常に有効な方法があります。下図のように、チーム全体の「業務マトリクス」をつくってみるのです。メンバー全員が担当しているすべての業務を付箋に書き出して、4象限に貼り出したうえで、そのバランスをチェックすると、チームの「健全度」が明確に見えてきます。

緊急度と重要度に応じて4つの象限で整理する

 もしも、「(1)緊急かつ重要な業務」と「(2)緊急だが重要ではない業務」が多く、「(3)緊急ではないが重要な業務」が少なければ、チーム全体が「仕事に追われている」という不健全な状態にある証拠(下図参照)。疲弊しているチームほど、「(1)緊急かつ重要な業務」に付箋が集中する傾向があるので注意が必要です。

チーム全体が「仕事に追われている」という不健全な状態

 一方、健全なチームは「(3)緊急ではないが重要な業務」に多くの付箋が集まります。
 なぜなら、「(1)緊急かつ重要な業務」の多くは、もともと「(3)緊急ではないが重要な業務」だったからです。(3)の段階で少しずつ「重要な業務」を進めることができるチームであれば、自然と「(1)緊急かつ重要な業務」が減ってくるはずなのです。

 あるいは、「(3)緊急ではないが重要な業務」に「担当業務のマニュアル化」がいくつも貼られているチームは健全性が高い傾向があります。業務をマニュアル化しておけば、急を要する業務が増加したときに、他のメンバーに業務の一部を任せることができるため、「仕事に追われる状況」が緩和されるからです。

 ですから、「仕事に追われる状況」が常態化している不健全なチームは、「(3)緊急ではないが重要な業務」を増やすことによって、(1)と(2)の業務を減らす努力が求められます。もしも、(1)と(2)に付箋が集まる状況を放置すれば、「仕事に追われる状況」は悪化するばかり。その場合には、マネジャーは「この悪循環から抜け出そう」と、メンバーに危機感を訴える必要があります。

 そして、このマトリクスを定期的につくることを提案するといいでしょう。できれば毎週1回、少なくとも毎月1回、マトリクスの状態をチェックすることで、チームを健全化していくのです。

 そのために重要なのは、日々、「朝夜メール」(連載第20回参照)を書くときに、このマトリクスを思い浮かべながら、業務の優先順位を的確に判断する習慣をつけてもらうことです。「『(3)緊急ではないが重要な業務』に十分な時間を使えているだろうか?」「その時間を確保するために、それ以外の仕事を適切にコントロールできているだろうか?」……。一人ひとりが、そのような意識をもちながら「朝夜メール」をつけることを習慣化できれば、少しずつマトリクスは改善され、健全なチームに変わっていくはずです。