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欧州の信用不安が再燃している。為替や金利に投資を行う「グローバルマクロ」と呼ばれるヘッジファンドの多くは、ギリシャや周辺国の先行きを悲観し、ユーロやスペイン・イタリア国債売りのポジションをあわてて取り始めた。
背景には、複数の要因が絡み合う。ギリシャやフランスの選挙で財政規律強化派が敗北し、政府債務の悪化懸念が再浮上。米金融大手JPモルガン・チェースの巨額損失を受け、規制強化に拍車がかかるとの観測で金融機関の収益悪化が不安視されるほか、スペインでは銀行の不良債権問題も深刻化、不安を増している。
加えて、最大の懸念材料がギリシャの再選挙である。焦点は、6月17日に控える再選挙で誕生する新政権が歳出削減策を放棄した場合に、国際通貨基金(IMF)などが、ギリシャ向け第2次支援の融資実行を拒否するかどうかだ。
支援が得られなければ、ギリシャは6月末にも国債の利払いや公務員賃金などの支払いが不能となり、債務不履行(デフォルト)に陥る。ただし、目下取り沙汰されている「ユーロ離脱」が即刻実現するとは限らない。
ユーロ導入国には、脱退規定がない。ギリシャがユーロから離脱するには、自ら欧州連合(EU)からの脱退を宣言し、EU首脳会議で過半数の同意を得てEU自体から脱退する必要がある。同意が得られなくても2年たてば脱退できるが、ギリシャ国民の8割はユーロ離脱に反対している。
もっともギリシャがユーロを離脱しようとしまいと、ギリシャのデフォルトで危機は表面化する。
既に実質破綻しているギリシャの銀行は、ギリシャ中央銀行からのギリシャ国債を担保にした資金調達か、無担保の緊急流動性支援によって何とか生き延びており、資金供給を止められれば連鎖破綻しかねない。頼みのギリシャ中銀は、ユーロ圏各国中銀からの1000億ユーロを超える借り入れが閉ざされると、債務超過に陥る。