それでも水は、まだ買うことに馴染めていない。トクホであっても、どうしても抵抗がある。今でも普通に水道水を飲んでいるし、どうせ買うなら別の飲み物、と思ってしまう。

そのうち「空気」もお金を払って買う?

 例外は、海外に行った時である。現地の水に馴染めず、おなかを壊してしまう可能性を防ぐため、ミネラルウォーターを買うことが多い。ほかの清涼飲料水は、なんだか正体がよくわからないと思ってしまうため、海外では「水」を買うことが習慣となっている。

 以前、水が日本人に合わないと言われている、ある国に行く前に、友人から「現地では飲食店で出される氷も注意したほうがいいよ。ホテルや高級店以外は、水道水を使っていることがあるから」とアドバイスを受けた。それを忠実に守っていたのだが、筆者は大のコーヒー好きで、その国はとにかく暑い。結果、オーダーの時、「Ice coffee without ice」という謎の英語を使ってしまい、現地の人を困惑させてしまった苦い記憶が残っている。

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 余談はさておき、日本国内でも水を買うことが当たり前の常識となっている。ウォーターサーバーを設置する家も多い。今の時代、筆者のような古い考えの人間は、相当な少数派だと思う。きっと、水を買うことが常識になった後に生まれた世代の若者にとっては、理解しがたい考えだと思うことであろう。

 そんな筆者でも、水を買うことに馴染んでくる瞬間があるのだろうか。そういえば昔、富士山だったか、どこだったかの空気を入れたという缶詰が流行ったことがある。子どもの頃だったから、本気なのかジョークなのか判断がつかなかったが、そのうち「空気」もお金を払って買うことが常識になる時代が来ないとも言い切れないと、ふと思うのであった。

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(フリーライター 宮崎智之)