米中貿易戦争の要となった感があるファーウェイ。米国、オーストラリアなどが排除の動きをとっており、5Gの準備を進める中で、世界各国の政府はファーウェイのインフラ機器をどう扱うべきかの決断を迫られている。

 そのような状況もあり、創業者兼CEOであるRen Zhengfei(任正非)氏がとうとうメディアの前に姿を現し、疑惑を全面否定した。Ren氏の言葉を各国はどう受け止めるのだろうか?

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メディアへの登場機会がほとんど無いことで知られるファーウェイ創業者の任正非氏。写真は同社サイトより

まったく攻撃の手を緩めぬ米国

 Ren氏の娘であり、ファーウェイではCFOを務めるWanzhou Meng(孟晩舟)氏がカナダで拘束されたことが明らかになって1ヵ月。Meng氏は保釈が認められたものの、カナダを出ることは許されておらず、米国が要求しているという身柄引き渡しが行なわれるかに注目が集まっている。

 1月初めのCESで、ファーウェイは目立った発表をすることはなかった(会場が米国ということを考慮すると当然だろう)。今となっては、2018年のCESで端末トップのRichard Yu氏が基調講演のステージに立ったことは随分昔のように思える。このときのYu氏は、AT&Tとの提携とともに米国市場で端末事業の展開を本格化すべく乗り込んだのに、直前のドタキャンを受けて苦汁をなめた。

 その後もファーウェイをめぐる動向が続いて報じられている。ポーランドでは、同社社員が通信キャリアであるOrangeの社員とともにスパイ容疑で逮捕された。

 北米でのファーウェイ関連の動きとしてはすでに和解していた問題に対し、捜査が進んでいるという話をWall Street Journalが報じている(https://www.wsj.com/articles/federal-prosecutors-pursuing-criminal-case-against-huawei-for-alleged-theft-of-trade-secrets-11547670341)。ワシントン州にあるT-Mobileのラボで実験中のロボット技術の情報を、当時T-Mobileと提携関係にあるファーウェイが不正取得しようとしたというもの。

 T-Mobileがシアトルの地区裁判所に提訴したのは2014年。問題の技術は”Tappy”と言われ、人間の指によるタッチをシミュレーションする端末テストロボットで、ラボを訪問したファーウェイ社員が無断で撮影したということのようだ。ファーウェイの弁護士はTappyは企業秘密ではなく、特許出願情報でプロモーションビデオも公開されていると主張していた(https://www.youtube.com/watch?v=mv69ZxKOFSw)。

 この事件は2017年に和解で終わったはずだが、今回米国政府は刑事事件として捜査を進める準備をしているという。

 ファーウェイは米国でFutureweiというR&D専門企業を抱えるが、2018年秋にFutureweiに対してもベンチャーのCNEXが特許訴訟を起こしている。今年に入り、このFutureweiに対し米商務省は輸出ライセンスの更新をしない方針であることをWall Street Jounalが報じている(https://www.wsj.com/articles/u-s-blocks-some-exports-from-huaweis-silicon-valley-unit-11547119803)。そうなると、Futureweiは米国で開発した一部技術を中国に輸出できないことになる。

米国依存を弱めるファーウェイ

 米国では1月中旬、米国の輸出規制や制裁ルールに反した中国の通信企業に米国の部品を輸出することを禁じる法案が提出されている。ファーウェイを狙ったものであることは間違いない。

 インテル、クアルコム、Broadcomなどの部品企業にとって、中国は得意先企業がひしめく市場だ。米商務省によると、2017年米国の半導体輸出は584億ドル(約6兆4000億円)、中国は2番目の市場でファーウェイからの売り上げは100億ドル規模に達するという。

 もし米中関係が悪化すると、これらの企業に痛手であることは間違いない。そして、中国市民の嫌米感がどのような結果を招くのか。昨年秋にファッションブランドのDolce & Gabbana(D&G)が起こした事件(SNSでD&Gのデザイナーが中国を差別するような表現があり、不買運動などの動きが生じた)を考慮すると、米国のブランドであるアップルが大きな痛手を受けるはずだ。ファーウェイに世界シェア2位の座を譲ったアップルはすでに中国で苦戦している。

 最終的に米国政府が米国企業の部品をファーウェイに輸出できないようにすると、ファーウェイはすでに進めているチップなどの部品開発をさらに加速させることになる。たとえば「HUAWEI P20 Pro」は自社開発のAIチップを搭載しているが、米国企業の半導体比率はわずか7%まで下がっているとも伝えられている。

オランダ、フランス、ドイツなどがファーウェイ除外を検討?

 米国政府の強硬とも言える姿勢に対し、創業者であるRen氏がついに重い腰を上げた。メディア嫌いで知られるRen氏が取材に応じるのはなんと4年ぶりという。本社のある中国・深センにメディアを呼び、質問に応じたようだ(日本の一部メディアへの対応も日程をずらして行なったようだ)。

 それらのやり取りをまとめると以下のような内容となる。

・中国ではどの企業もバックドアを仕込むような義務はなく、ファーウェイは中国政府の要請でスパイ行為を行なったことはないし、今後もすることはない
・顧客と自分自身の利益を傷つけるようなことはしない
・米中の貿易戦争は世界にダメージを与える
・ファーウェイはRen氏と社員の持株会社であり、社外の資本は入っていない

 Ren氏の訴えにも関わらず、ファーウェイに対する包囲網ができつつある。ここ数日で、オランダ、フランスでファーウェイを除外するかどうか検討していることが伝えられている。スパイ事件のあったポーランドもしかり、そして一度は懸念が晴れたように見えたドイツでも内務省が除外検討とも伝えられている。