卵の価格が歴史的安値に
業界はどこで判断を誤ったか
鶏卵の価格が歴史的な安値水準まで下落しています。卵の価格の指標になるJA全農たまごの初取引で、Mサイズが1キロ100円の値をつけました。例年、その年の初値は下がる傾向にありますが、この100円というのは15年ぶりの安値で、現在でも130円と非常に低い水準で卵の取引価格が推移しています。
昨年末はこの価格が185円で、だいたいこれくらいの水準にならないと農家はちゃんとした利益が確保できないといわれます。実際、農家によれば、この価格水準だと販売価格に占める飼料費が8割に達してしまい、到底利益を残すことはできないと言います。
この先の見通しですが、安値が続くことでスーパーでの特売需要が増え、出荷量も取引価格も改善していく可能性はあります。とはいえ、それでも例年より3割ほど安い相場になりそうだということで、関係者は危機感を高めているようです。
このような事態を招いた重要な分岐点が、2015年の鶏卵価格の高騰にあったといいます。この年、卵の取引における年平均価格が224円という高値で推移したことで、生産者が競って設備投資をし、飼育する鶏の数を増やしました。結果として、この年を境に業界全体で卵が供給過剰となり、今回の歴史的な安値を迎えてしまったのだといいます。
取引価格が下がったことで、都内でも卵1パックを100円台の下のほうで安売りするスーパーが出てきました。そのことで卵の取引量は順調に戻してきましたが、一方で、安売りはこの問題の根本的な解決にはならないようです。卵の価格だけが下がっても、世の中の卵需要が増えるわけではないからです。
卵のように、価格を下げてもそれほど需要が増えない商品のことを「価格弾力性が低い商品」と言ます。このような商品は、供給過剰になるとそれ以上のペースで価格が下落します。問題解決の方向性としては、生産量の調整しかありません。
そのため、業界では国の生産抑制事業制度が発動されることに期待しています。供給を適正な水準に減らすことで、農家が利益を出せる取引価格に戻そうというわけです。