人生の転機
休職中に考えたこと

 30代後半、Bさんは体調を崩して長期休職を余儀なくされた。激務による心身の過労が原因であった。誰もが知っていて、うらやまれることもある一流企業に勤めていたBさん本人の言葉を借りれば「キャリアをしくじった」といっていい出来事である。

「かなり落ち込んで、そのことを近況報告としてFacebookに投稿しました。たくさんの人から、普段あまり交流がない知り合いからも気遣う言葉をかけてもらって、ありがたかった。仕事ではここでつまずいてしまったが、今自分が専念できること、つまり精一杯療養に集中しようと思えました」

 時間を持て余しがちになった休職中、Facebookにログインする機会が増えた。Bさんも医者に勧められて手探りで山登りなどを始めていて、その様子を投稿していた。

 しかし、徐々に劣等感が募っていった。現場でバリバリ働いていた自分が、今は人が働いている時間に悠々と山登りに精を出している…はたしてこれが許されるのかという疑問は拭えなかったそうである。

「私の山登り系の投稿にも、多くの知り合いが好意的なコメントを寄せてくれていました。彼らに、私がキャリアをしくじったことを喜ぶような心理があったとは私にはどうしても思えない。表で笑って裏で陰口、などでなく、本気で心配してくれているのが伝わってきました。

 それがうれしい半面、非常にみじめにも思えた。それに彼らは、私に心配の言葉をかけてくれているのと並行して自分の人生を謳歌している様子を投稿しているのです。劣等感がいやが上にも増していきました」

 Bさんは段々と投稿する機会を減らし、ログインする機会を減らし、ついにはまったくログインしなくなってしまった。