チーフ・ハピネス・オフィサーは日本ではあまり聞き慣れない役職だが、従業員満足度を高めることで最終的な利益も上げていく考え方から、近年、注目されている。アックス氏によれば、2人が「従業員の幸福度(ハピネス)」の重要性に気づいたのは2015年、赤坂に1号店をオープンした時だった。

「さまざまなプレッシャーに晒されながらほぼ立ちっぱなしで働く経験は、フードトラックでソーセージを売るのとはまったく違っていました。肉体的にどんなに疲れ切っていても、お客さんには最高の笑顔で接しなくてはいけない。それがいかに大変なことか、私たちはその時、身をもって知りました」(アックス氏)

 同時に、最高の顧客体験を提供するには従業員が幸福でなければならないことにも、気づいたという。

大手外食店出身のベテランも入社
従業員の「幸福度」を最重要視

 カイザーキッチンでは、「幸福度」が重要な業績評価の指標にもなっている。全従業員に対しては8週間ごとに幸福度調査を実施。お客さまアンケートでも、従業員が幸せそうに働いていたかなどを聞いている。売り上げや客単価を伸ばすことはもちろん、店長の重要な仕事だが、経営陣がそれ以上に重視しているのは「チームメンバーを幸福にしているか」という点だ。

 新規出店する際はまず、すでに働いている人の中からやる気のある人を募る。ホールスタッフからマネジャー、店長へとステップアップできるキャリアパスも明確にしている。

 ところで、年間10店舗以上の出店を可能にするには、腕のいい店舗開発責任者が必要だ。実は、カイザーキッチンの本部機能を支えているのは、スシローやドトールコーヒー、スターバックス、すかいらーくなどで経験を積んだベテランたちだ。いずれもヘッドハンターなどを通じて出会い、2人が何百人と面接した中から選んだ。

 話を聞きながら、なぜ、飲食業界のベテランがドイツ人の若き起業家の下に続々と集まって来るのか不思議に思った。この点については、日本橋高島屋店店長の柚木氏が語った言葉が印象的だ。

「それはやはり、スタートアップの熱気を感じられるからでしょう」

 どのような業界で働くにせよ、十分な賃金と休息を得られるのはむしろ、当たり前のことだろう。人間が働く幸せを感じるのは、仕事そのものの意義や面白さを実感すると同時に、企業の成長に自らが貢献できていると感じられる時なのかもしれないと感じた。