「率直に言います。私たちは日本と日本国債の格付けを下げるつもりです」

「残念ですが、あなた方がそう判断したのなら仕方ありません」

 森嶋はそう言うしかなかった。自分は国交省の一役人にすぎないのだ。

「AAマイナスからAマイナスに。3段階の降格です」

「2段階ではないのですか」

「それは先日の地震前の評価です。今回の地震で日本、特に東京は地震に弱い都市だということが世界に示されました。現在のように、日本経済が世界と強く連動し始めてから、東京直下型地震というものはありませんでした。地震自体は、戦前に一度ありましたね」

 ダラスは賛同を求めるように森嶋を見ている。森嶋は軽く頷いた。

「しかしその1923年の関東大震災は、東京が今ほど世界と関連を持ち、巨大化していなかったときのものです。それでも、10万人以上の死者を出し、一帯が焼け野原になりました。今度、あのレベルの地震が起これば、さらに甚大な被害が出るでしょう。しかも、それが迫っているという研究結果も出ているそうじゃないですか」

 そして、と言って、ダラスは窓の方に視線を移した。かすかに息を吸って続けた。

「日本には、今後東海、東南海、南海地震という連動する可能性が強い巨大地震の発生が危ぶまれています。経済損失は81兆円と政府は試算しているようですが、さらに増えるという学者もいます。その時、同時に東京が大きな被害を受けたら。司令塔をなくした日本の復旧、復興はどうなりますか。立ち直ることが出来ますか。出来るとしても、長い時間がかかるでしょう。世界が受けるダメージは、ギリシャ危機やリーマンショックの比ではないでしょう」