森嶋は無言でダラスの言葉を聞いていた。それは正に、森嶋たちが危惧していることなのだ。

「私たちはそれを重視しました。日本政府がこの決定を重く受けとめ、その対策に取り組むことを望んだものでもあります」

 森嶋には反論は出来なかった。彼らも高脇の論文を読んでいるのか。それとも、他に同様な研究があるのかもしれない。

 ただし――と言ってダラスは森嶋を見据えた。再度、穏やかさも垣間見える表情に戻っている。

「この評価はあくまで、現時点の決定です。なにかプラスの材料があれば、直ちに評価を見直します」

「プラスの材料とは?」

「それはあなた方の領域だ。考え、実行する。今後の日本政府の動きによって、さらに評価は変わってくるということです。良くも、悪くもね」

 ダラスは大きな身体を丸めるようにして話した。口調は穏やかだが、その言葉は強い信念に裏付けされたものだ。

 1時間ほど話したころ、ロバートがもういいだろうという顔で森嶋とダラスを交互に見て、立ち上がった。

(つづく)

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