社員の給料は高いのに、人手不足で長時間労働が常態化する甲社。一番若いAも入社して半年ほどすると多忙になり、帰宅時に終電を逃すことが増えた。そのため、会社で寝泊まりするようになる。ところが1月下旬のある日、Aが体調不良で医者に行くと、診断の結果はインフルエンザだった。Aは会社に休む旨を連絡するものの、会社は出勤を強要させ…。(社会保険労務士 木村政美)
オフィス及び家庭用レンタル機器を扱う創業8年目の会社。社員数は10名で、全員がC社長の声がけで集まった学校時代の同級生や後輩である。会社の業績は順調だが、人材不足が深刻で、社員たちは休日返上、長時間労働を強いられている。
<登場人物>
A:25歳。大学卒業後ニートをしていたが、7ヵ月前に入社、営業を担当をしている。甲社では親切にしてもらっているが、残業が多すぎて疲労困憊の状態が続いている。
B課長:35歳。Aの上司でC社長の同級生。
C社長:35歳。学生時代はやんちゃ集団のリーダーだった。
D社労士:C社長の高校時代の友人で、甲社の顧問社労士。
入社当時、顧客のいないAに
課された仕事のノルマは?
Aは深いため息をつくと、大きく背伸びをした。腕時計を見ると夜の10時を回っていた。
「電話かけのノルマ1日1000件!」
これが入社当時、顧客のいないAに課された仕事のノルマだった。初めての会社勤めであるAにはきつい仕事だったが、C社長をはじめ、上司、先輩たちはみんな親切で、面倒見が良かった。ランチや夕飯を毎日おごってもらい、たまには飲みにも連れて行ってくれる。みんなに励まされたAは頑張ったかいもあり、やがて少しずつ顧客を獲得できるようになった。