本当に優雅な白鳥はいない
いわゆる「社内ノマド」でもそうなのですから、完全にフリーな立場のノマドともなれば、さまざまな苦労が伴うでしょう。
以前、ジャーナリストの櫻井よし子さんの自伝を読んだのですが、彼女は先輩から「女性は3倍働いて、優雅であれ」とアドバイスされたそうです。
フリージャーナリストとして活躍する女性は少なく、男女差別も色濃くあった時代だからということもあるのでしょう。ですが、いつも上品な佇まいの櫻井さんがそうであるように、優雅に泳いでいるかに見える白鳥も水の下で懸命に足を動かしているからこそ前に進めるのです。
会社のしがらみから自由になりたいという人は多いのかもしれません。特に若い人は、組織というものに対して強い不信感を抱いているのかもしれません。
ですが、自由でスマートに見えるノマドライフも決して楽な稼業ではないはずです。キレイごとでは割り切れない部分もきっとある。
スキルさえあればうまくいくというものでもないでしょう。時には仕事を断る勇気や、何をいわれてもヘコたれないタフな精神も必要でしょう。人を蹴落とすようなずる賢さも求められるかもしれません。まだまだ保守的なところのある日本社会でノマドのような新しい生き方をするには、よほど戦略的にやらなくては成功しないのではないでしょうか。
誤解がないようにいっておくと、私は決してノマドを否定するわけではありません。ここでいいたいのは、物事はメディアで発信されるようなポジティブでキラキラした「陽」の部分だけでできているわけではないということです。そのウラには必ず目を背けたくなるような「陰」の部分がある。