「ノマドワーキング」に適したカフェなどの情報が飛び交う「ノマドワーキング研究会on Twitter」。同研究会では、勉強会なども開催予定だとか。

 「ノマドワーキング」という言葉をご存知だろうか? 「ノマド」(Nomad)とは、英語で「遊牧民」を表す言葉。すなわち、オフィスに“定住”せず、喫茶店や屋外などで仕事をするスタイルだと考えればいいだろう。

 その起源は、米国・シリコンバレーで一攫千金を夢見た若者が、無線LAN環境の整ったカフェに入り浸ってプログラムを仕上げたことにあるらしい。日本では、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、著書『仕事をするのにオフィスはいらない ノマドワーキングのすすめ』で採り上げたことなどから、注目を集め始めたワードである。

 最近では、ノマドワーキングに適した場所などの情報をTwitterで交換する「ノマドワーキング研究会」なるコミュニティーも登場するなど、徐々に市民権を獲得しつつあるようだ。

 こうした働き方が出現した背景には、スマートフォンやタブレット型コンピュータの浸透、無線LAN環境を備えた場の増加など、モバイル環境の進化があるのは言うまでもない。

 オフィスの机上にあるパソコンの前に陣取っていなくても、情報にアクセスし、まとめた企画などを手軽に会社や顧客などに送ることもできる。それならば、「オフィスでなくても自分が集中できる環境で仕事をしたほうが効率がいい」というわけだ。

 さて、フリーランスで働いている人の中には、「そんなの、昔から実践中」という方もいらっしゃるだろう。ただ、ここで注目すべきは、こうした働き方が企業で働く人にも次第に浸透しつつあることだ。

 ちなみに、前述の佐々木氏は、著作の中で「ノマド・ワーカー」を「“働く場所を自由に選択する会社員”というワークスタイルを実践している人たちのこと」と定義している。

 では、企業で働く会社員にとって、働く場所を自分で選べる「ノマドワーキング」がもたらすものは、メリットのみなのだろうか?それを考えるうえで、ひとつの鍵になると思われるのは、この働き方が企業で許容される前提が「成果主義」であることだ。

 オフィスという場を共有しなくなると、当然のことながら、評価者にとって被評価者の仕事のプロセスは、より見えずらくなる。「それでもいい」ということは、「プロセスより成果重視」すなわち「会社に利益をもたらしてくれるなら、どこで仕事をしていてもかまわない」ということだ。

 有り体に言うならば、「あいつは、なかなか成果が出ないけど、頑張っているから」は通用しなくなるということ。その意味では、「ノマド・ワーカー」は、より厳しい視線にさらされているとも言えるだろう。

 そして、「成果をあげる」ことを前提とするならば、基本的に「仕事をしている人」が集まっているオフィスという「場」の力を借りることなく、監視者が見ていないところでも、自らを律し、仕事をしなければならない。逆に言うならば、それができずに、ネットサーフィンなどに時間を費やしていれば、会社という拠り所を失って “漂流”してしまう危険性もあるということだ。

 モバイル端末の進化によって、「ノマド・ワーカー」の数自体は、今後も確実に増え続けていくだろう。だが、この働き方で成功するためには、「自律」が前提であると思われる。」自由には厳しさが伴う、ということなのかもしれない。

(梅村千恵)