「意地悪な見方」への拒絶反応
ビジネス書における「成功談の落とし穴」でも書きましたが、こうした陰の部分はなかなか表に出てきません。特に最近は泥の中でもがき苦しんでいるような面はなるべく見せずスマートなイメージを打ち出すことも、「セルフプロデュース力」とされているからでしょう。
そのせいか、特に若い世代を中心に、何ら疑うことなく「手を汚していない」風の成功談に引きずられる人が増えている気がするのです。
私が大学で教えている学生の例を挙げましょう。
雑誌の「働く女性の1日」といった特集を見て、「わ~、この人って忙しい時でも、こんなに勉強しているんですね!」と驚いている女子学生がいました。
そこで、私が「でも、これがすべてじゃないんじゃない? たとえば、あなたはツイッターに全部本当のことを書くの?」と訊くと、「いいえ、隠していることもあります」と彼女。「じゃあ、この人もそうかもしれないじゃない」。そういうと、「ああ、そうか!」と。雑誌に載っていることがすべてではないと、初めて気づいたようでした。
また、就職活動で内定をたくさん取り、かつ起業もし、社会貢献活動もしているようなデキる学生(「スーパー大学生」というそうです)のツイッターをちくいちチェックしている学生がいました。
「それに比べてオレは……」などと落ち込んでいるので、「知っている人?」と訊くと、「見たこともないです」という。ちょっとあきれて、「そんな会ったこともない人と比べて落ち込んでも仕方ないじゃない? そもそも本当に実在する人かわからないわよ」というと、「そんな意地悪な見方をするなんておかしいですよ!」と彼。逆に責められてしまいました。