前から気になっていた忘れ物トラッカー「Tile」
でも6年も購入しなかったのはさほど必要なかったから!?

 ついつい広告を見て、いつも「欲しいなー」と思っているモノってありますよね。筆者にとっては、忘れ物トラッカーのTileがそれでした。

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日本でも販売されている忘れ物トラッカーの「Tile」。国内では1つだと約3000円、4つで8500円程度です

 Tileのことは割と以前から知っていました。IoTなんて騒がれる以前から、スマートフォンとBluetoothで接続してカギの在りかを発見できるようにするTileは気になっていました。

 筆者が米国に渡って1年がたった2012年12月に、シリコンバレーで創業した企業です。米国の街中でも時折、白い角が丸められた正方形のタグがキーホルダーにぶら下がっている様子を見かけるようになっていきました。

 気になっていながらも手を出してこなかった理由については、個人的に非常に興味があります。なぜ優先順位が低かったのか、ということです。気になっていながら、6年間も購入しなかったということは「カギの在りかを見つける」という目的にピンと来ていなかったということですね。

 筆者はずぼらな方で、玄関先に鍵をかけるフックを用意しても、ズボンのポケットに鍵を入れっぱなしにしているような人です。それでも鍵の捜索にさほど時間を割かなくて済んだというのは、偶然なのか、そういうモノなのか、気になるというわけです。

もし買うなら4個セットで購入すべき

 もしTileが気になっている人は、1個単位ではなく、最初から複数購入した方が良いと思います。割引率が大きいということもありますが、1つトラッキングし始めたら、必ず他のモノにも取り付けてトラッキングしたくなるからです。

 Tileの仕組みは、スマートフォンのアプリに自分のTileを登録して、あとはTileアプリをバックグラウンドで立ち上げっぱなしにしておくだけです。すると、Tileが通信圏内にあるかどうかがアプリからわかり、必要であれば音を鳴らすことができ、そしてTile側からもスマホをマナーモードであっても鳴らすことができるようになります。

 意外と便利なのは、鍵束からiPhoneの在処を発見できるようになることです。鍵はポケットに必ずあっても、スマートフォンをどこかに置いてしまうことが意外に多いのです、筆者の場合。もちろんApple Watchを装着していれば、iPhoneの音を鳴らす機能も活用できるのですが、Tileはポケットに入ったままでもボタンを探り当てられるので、そちらの方がシンプルでしょう。

 4つ買えば、4種類の持ち物から鍵を発見できるようになるわけです。これはなかなか素晴らしい体験ですね。たとえばスーツケースやカバンに仕込んでもいいし、もしお子さんがいる方なら、子どものリュックサックに入れておいても良さそうです。

 米国では子どもが見えないところに行くこと自体があり得ないのですが、日本だとお店などで子どもが自由に歩き回っている様子を見かけます。スマホから音を鳴らして、居場所を突き止めるにはもってこいですね。さすがに50m以上離れてしまっては、Bluetoothの接続が切れてしまうわけですが。

Tileのデザインパターンを探る

 もう少しTileをメタ的に捉えれば、Bluetoothタグを低消費電力で稼動させっぱなしにして、スマートフォンと紐付けて、アプリからタグとの接続の有無や、タグのボタンに対するアクションを設計するという仕組みです。

 ちょうど同じ時期に、腕に装着するアクティビティトラッカーも話題になっていたことから、Bluetoothなどでスマートフォンと接続するデバイスがさまざまな形で検討されていた時期だったんですね。

 スマートフォンとシンプルなBluetooth機器をつないで、データをやりとりするというデバイスの設計は、スマートウォッチやスマート家電などにも通じるものがあります。しかしTileは近くにあるかどうか、そして音を鳴らしてどこにあるかを見つけられる、というシンプルな目的を果たしています。

 Bluetoothデバイスは必ずしもインターネットに接続されている必要がない点も、IoTデバイスの設計とは異なります。最近ホームスピーカーからTileを呼び出せるようになりましたが、家の中で鍵の在処が見つけられれば、それで良いわけです。本来はネットは必要ありません。

 その上で、Tileはグローバルな探し物ネットワークをクラウド(群衆の意味、CloudではなくCrowd)で構築しています。自分のスマートフォンの範囲に自分のTileがない場合、他のTileユーザーがアプリで電波を拾った場所を活用できるのです。

 これを「Crowd GPS」と呼んでいます。Tileユーザーが増えれば増えるほど、ネット接続機能を持たないTileタグをなくしたときの捜索範囲が広がっていくわけです。Tileを使い始めたら、どんどん広めたくなってしまう仕組みがここにあります。

 とはいえ、鍵にしてもカバンにしても、Crowd GPSに頼らなければならなくなった段階で、かなり危機的な状況ですよね。鍵が手元にない場合は家には入れなくなるわけですし、カバンがないというのはいくらTileタグがあっても盗難の危機にさらされている状態だからです。

 なくしてはならないモノにTileをつけるのですが、なくしてはならないものをなくさないようにするのは当たり前のこと。自分でズボラと書きましたが、なくして困るモノをなくさない人なだけ、なのかもしれません。

 実際、Tileを導入して3ヵ月ほどが過ぎましたが、実は鍵の在りかをTileに頼って発見したことはありません。ただ、1年ずつボタン電池を交換する保険だと解釈すれば、十分納得ができる種類のモノでもあります。


matsu

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

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