阪神大震災時の様子
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なぜ、人は非常時に
誤った判断をしてしまうのか

“「本書は災害復興についての本ではない。災害の最中に――警察や消防士たちが到着する前に、レインコートを着た記者たちがやってくる前に、惨事に対する何らかの見方が押しつけられる前に――何が起こるのかについて述べた本である」”

『生き残る判断 生き残れない行動』書影
『生き残る判断 生き残れない行動』 アマンダ リプリー著 岡 真知子翻訳 筑摩書房刊 1000円+税

 災害・テロ・事件・事故。もしもの時の、とっさの判断が本書『生き残る判断 生き残れない行動』のテーマである。有事に何をすべきかを並べたマニュアル的な内容ではない。なぜ、人は非常時に誤った判断をしてしまうのか。その背景には、人がそもそも持っている、どのような思考のクセが影響しているのか。そんな根本から考えていくスタンスが特徴だ。さまざまな惨事から生き延びた人々へのインタビューに加え、社会学者、心理学者、脳科学者、神経科医、テロ対策専門家、警察官、消防士など幅広く意見を求めて得た知見を、まったく他人事に思えないエピソードの数々を通して伝えてくれる。

 非常事態にまず起こりがちなこととして挙げられるのが「否認」である。9・11でのワールドトレードセンタービルからの生還者の証言が取り上げられているが、たとえ後世に語り継がれる大惨事であっても、いざその場に居合わせるとなると、事の重大さを判断するのが想像以上に難しいことがわかる。