ところが、出店は金融機関からの借り入れに頼っていた。そのため、負債が増えて金融機関の姿勢が変わると、資金繰りが苦しくなった。次第に取引先への支払いが滞るようになり、従業員への給与支払いも停止へ。従業員が出社しないようになると、一部の店は閉店に追い込まれた。手元の資金はさらに減少。ついには営業を続けられず破産に至った。

「ナポリス」の業態自体は優れたものであり、業界内外から注目を集めていた。しかし、いかに優れたビジョンを持っていても、少ない投資で成長できるITベンチャーと、飲食ビジネスとでは、かかる費用が決定的に異なる。失敗の原因は、出店費用を甘く見て、手元資金の重要性を理解していなかったことにあるだろう。社内に財務に明るい人間がいなかったことも影響したと考えてよい。

◇幸運なヒットを契機に傾く経営

 ヒットの誕生は、経営者の手腕によるものもあれば時の運もある。ヒットの勢いのまま積極投資をした結果、過剰債務が残って経営破綻につながる場合や、慢心から社員の信頼を失う場合も多いものである。

 シリーズ累計250万部を超える大ヒット絵本『こびとづかん』で知られる長崎出版は、その一例といえよう。同社は、2014年に東京地方裁判所から破産手続き開始決定を受け、ファンの間で衝撃が走った。

 2006年、児童書出版社から転職してきた編集者が入社早々に出したヒット作が、『こびとづかん』だ。このブームで、業績が右肩上がりで伸びていった。特定の商品に頼る事業構造の脆弱さに気づいていた当時の社長は、次の収益の柱を求めた。本業と離れた投資を繰り返すようになったが、これがつまずきの始まりだった。多角化を狙った投資で、少なくとも2億円以上の損失を被ったと見られる。

 さらには、2012年に『こびとづかん』の担当編集者が辞職。経理や財務は社長が管理していたが、お金にルーズなところがあった。そのため、著者への印税支払い漏れが頻発していた。社外の活動が増えると、その傾向に拍車がかかり、編集者が不信感を抱いてしまったのだ。

 退職した編集者は、『こびとづかん』のキャラクターグッズの権利を管理していた関連会社で、顧問に就任。著者との出版契約が見直され、最終的に長崎出版は『こびとづかん』の出版権を失った。社長のスポンサー探しも失敗に終わり、同社は営業停止となった。

 急激に売上が上がると、事業継続に必要な運転資金も加速度的に増える。その途端に管理の難易度が上がっていく。この事例からは、急成長期こそ土台固めが重要という教訓が引き出せる。