FBI方式で耳の痛いことを伝える

奇跡の会社が教えてくれる!<br />「部下が信じられない症候群」の治し方<br />――エニタイムズ代表取締役 角田千佳さんの読み方(前編) 本荘修二(ほんじょう・しゅうじ)
『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する奇跡の会社』監訳者
新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Vetures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。『エコシステム・マーケティング』(ファーストプレス))など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。

本荘 リーダーは、部下を信じて任せるだけではなく、時にはネガティブなフィードバックもしなければならない。そう気づいたクリステンさんが取り入れたのが「FBI」というコミュニケーションのフレームワークです。F(Feeling:自分の気持ち)、B(Behavior:相手の振る舞い)、I(Impact:その振る舞いが及ぼした影響)の3ステップで会話し、相手の間違いを正したり感謝を伝えたりする、というもの。アメリカ人はこの手のネーミングがうまいよね。

角田 本を読んで今までの自分を振り返ってみたのですが、うまくコミュニケーションが取れているときは、まさにこのFBI方式で話していたことに気づきました。まったく無意識にやっていたのですが、これからは意識的に実践してみたいですね。

 「個人的なストーリーが人間関係を変える」という話も興味深かったです。スチューデント・メイドの社員たちが、ワークショップで子どもの頃の家庭環境や今の仕事につながったエピソードなどを語る場面です。語ることで自分にとっての仕事の意味が見えてくるし、同僚との関係も変わってくるんじゃないでしょうか。

 ANYTIMESでも、自分のプロフィールを詳しく物語っているユーザーさんほど仕事の依頼がたくさん来るんですよ。プライベートなストーリーもさらけ出すことで、相手も親しみをもてるようになるんでしょうね。

本荘 リーダーも部下も自分をさらけ出せるようになると、仕事はもっとうまく回り始めるでしょうね。僕もいろいろな起業家をメンタリングするのですが、リーダー、とくに男性は自己開示するのが苦手な傾向があるなあ、と感じます。だから職場でも理解されず、孤独になっちゃう。しょうがないから西麻布あたりで男同士飲んで、傷をなめ合ったりしてね(笑)。

角田 私も社交的なほうではなく、特に相談する側になるのは苦手です。

 ですが、逆に、全く異なる環境にいる友人たちから相談をされて、一緒に解決策を考えているうちに、自分がまさに悩んでいた問題解決の糸口も見えることが多くあります。夫はイタリア人なのですが、文化の違いも影響し、一つの事実に対して全く異なる視点を持っていることも多く、自分で問題と考えていたことが、そもそも問題ではないと気付くこともあります。自分ひとりで考え込んでいても答は見つからない。違う立場、違う視点の人たちとふれあうことも大切だなと感じています。

本荘 角田さんは、普通の人を先生に変えちゃう才能があるのかもしれませんね。クリステンさんも、出会った人、起こった出来事からどんどん学び続け、わずか10年あまりで全米に知られるリーダーへと成長を遂げました。角田さんのこれからの活躍も楽しみです! 今後はどんな展開を考えていますか。

角田 ANYTIMESをより多くの方々に使って頂き、シェアリングエコノミーの概念が世の中に広がって、より生活が便利になればと思っています。現在、日本の各地域での実験的な取り組みもしております。

 この本を読み、会社の規模が大きくなったときに起こることのイメージもしやすくなりましたし、クリステンさんの考え方も学べたので、アクションの可能性が広がった気がしています。

(後編へ続く)