第四章は「プロセスを解体する」具体的な仕事の進め方についての章で、最後の章は「ビジネスに力を入れる」。何を当たり前のことをという感じだけれども、主に販売商品の値上げなどのビジネス的な判断をどのように行ってきたのかについての章になる。これもなかなかおもしろい。たとえば、ソフトウェアを売る時にユーザー単位のビジネスモデルがある。一人あたり5ドルで、100人使うなら500ドルですよみたいな。ただしそれをやると、当然ながら大勢の社員を雇用している大企業がビジネス上無視できなくなる。外せないお得意様になってしまうと、売る側は少なからずその意見を取り入れざるを得ず、開発の自由は失われるだろう。

 著者らが偉いのは、そのあえて流れには乗らなかったことだ。彼らが売っている「ベースキャンプ」は一律一月99ドルで、ライセンスを購入する企業の従業員が5人でも500人でもそれ以上にもそれ以下にもならない。だから、特定の顧客に依存することはない。この割り切りができるのは(当然、大口顧客からはお金をたくさんとったほうが利益は上がるから)正直すごい。

ソフトウェアの会社だからできるんじゃないの?

 いろいろと大層なことを書いているけれども結局のところソフトウェア会社、それも自社サービスを提供している会社だからできるんでしょ? というのはもっともな疑問というか批判のように思える。実際、彼らは全部自分たちの会社について書いているので、具体例をそのまま活かそうとしたらそれはそうだろうが、他人の時間を大切にするというそもそもの物の考え方の部分や、ビジネス判断の部分など、より抽象化して部分部分応用することは誰にでもできるはず。

 何より彼らが凄いのは、そうした思想から導き出された理屈を実行できるように、会社組織全体を柔軟に作り変えているところにあるようにも思う(複数あった自社サービスをベースキャンプに一本化して、会社全体をミニマム化したり)。そう考えると、「いまのままで」できないというのは何の言い訳にもならず、ハードワークにNOを叩きつけるためには、「これができるようにするには組織の何を、どこを変えればいいのか」という方向で考える必要があるのだろう。

つまらない仕事や無駄を減らし、自分の時間を大切にするには

(HONZ 冬木糸一)