とにかく表現方法の選択肢が増えたことで、影響力の与え方にも選択肢が増えている。特にデジタルな表現方法が圧倒的に増えたことで、物理的な表現力はそれほど強くなくてもあまねく拡散するようになった。「盛り上がり力」という点で言えば、今は物理的なデモ運動よりツイッターの炎上の方が社会的な影響力は強いだろう。

 デジタルの力が強い今の時代だからこそ、考え方やアイデアをうまく伝えられる手段があれば、リーダーシップは発揮できる。必ずしも口で雄弁に語る必要はない。

ドキュメントは理想的なカルチャー
自分の得意な表現法を磨けばいい

 僕自身は、重要なことは特にドキュメントで発信することが多い。ドキュメントにまとめてみんなに読んでもらう。物事を正確に理解してほしいときには、特に有効だ。コメント機能を使えば、疑問や質問も含めて細かいところまでみんなの意見が拾える。

 これは、グーグルでの経験がベースにある。わからないことがあって誰かに聞いても、口頭では教えてくれない。チャットでさらっとリンクが送られてくるだけである。「リンク先のドキュメントを自分で読め」ということなのだ。あらゆることがきちんとドキュメントにまとめられているのが、エンジニアのカルチャーだった。

 僕がドキュメントを選ぶ理由は、得意な手段であるだけにとどまらない。ドキュメントは、お互いをすごくリスペクトしたコミニケーションスタイルだから気に入っているのだ。ドキュメントを読む行為は、情報を取る側の学ぶ姿勢を前提とする。「本当に知りたい」という熱量がなければ、なかなかドキュメントは読めない。大事なテーマを発信するにはなおさら適しているのだ。

 質問に回答する側がいちいち口頭で説明しなくていいという意味でも、お互いの時間を大切にできる。お互いにとってとてもリスペクトフルなツールである。だから表現手段にドキュメントを選ぶことが多い。一方でSNSは、あまり得意ではないから頻繁には使わない。

 要は、どういう手段でもいいけれど、自分はどの手段を軸に持つのかを見極めることが大切だ。チームとしては1人だけれど、1000人の組織の中で一番影響力を持っている――。組織の規模やポジションを超えて、そうした状況がテクノロジーの進化によって当たり前のように起こる時代になっているからである。

 ならば、自分にとって強みになる表現方法は何か。それを考えて磨いておくことは、きっとムダにはならない。